糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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糖尿病の治療薬は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬に続き、新しくSGLT2阻害薬が登場しました。糖尿病治療薬にはどのような種類があるのか。また、新たな治療薬の特長や今後期待される新薬について解説します。

 

日本糖尿病学会は2013年5月に開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会で、「熊本宣言2013」を発表しました。ここで発表された新基準により、目標別にHbA1c値6.0%未満、7.0%未満および8.0%未満とすることが示されました(表1)。治療目標は年齢や罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して、個々の患者さんごとに設定するとされています。
2型糖尿病の基本療法は、食事療法と運動療法ですが、それらを行っても、目標とした血糖コントロールが得られない場合があります。その場合は、薬物療法を行うことになります。

2型糖尿病の薬物療法では、注射薬または経口血糖降下薬が使われます。注射薬にはインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬があります。経口血糖降下薬は、インスリン抵抗性改善系、インスリン分泌促進系、さらには糖吸収・排泄調節系に分類されており、患者さんの状態に応じて選択されます(図1)。1種類の経口血糖降下薬で血糖コントロールの目標が達成されない場合、複数の薬を使うこともあります。
どの薬を使用するのかは、血糖値の変動やHbA1c値、インスリンを分泌する能力やインスリン抵抗性など糖尿病の状態はもちろん、患者さんの生活スタイル、職業、年齢、肥満の程度、合併症の有無、肝臓や腎臓の働き、予測される薬の副作用などから総合的に判断して決定します。

インスリン以外の注射薬として、最近GLP-1受容体作動薬が使用可能となりました。この注射薬は、すい臓のβ細胞にあるGLP-1の受容体に作用して、インスリン分泌を促します。血糖値の上昇に応じてインスリンを分泌させるため、低血糖を起こす可能性が低いと言われており、体重減少や摂食行動の改善も期待されています。

※GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1):食事を摂取すると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する働きを持つホルモンのひとつ。

 

経口血糖降下薬のうち、インスリン抵抗性改善系には、ビグアナイド薬とチアゾリジン薬があります。ビグアナイド薬は肝臓が新たな糖を作るのを抑える働きがあり、チアゾリジン薬は筋肉や肝臓でのインスリンの働きを高めます。
インスリン分泌促進系には、これまでのスルホニル尿素薬(SU薬)と速効型インスリン分泌促進薬に加え、5年前からDPP-4阻害薬が使用可能となりました。DPP-4阻害薬は血糖値が高い時にインスリン分泌を促進し、また血糖を上昇させるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑える作用により、高血糖時のみ血糖を低下させます。SU薬はすい臓のβ細胞を直接刺激してインスリン分泌を促進する働きがあります。速効型インスリン分泌促進薬は、SU薬よりも速やかにインスリン分泌を促進します。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸からのブドウ糖の吸収を遅らせる働きがあり、食後高血糖を改善します。

 

現在も多くの糖尿病治療薬が開発されています。今年登場したSGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)阻害薬もそのひとつです。
SGLTとは、細胞内にブドウ糖を取り込む機構のひとつで、いくつかの種類があります。その中のひとつであるSGLT2は、ほぼ腎臓にのみに存在し、尿のもとである原尿中の糖を体内に栄養分として戻す役割(再吸収)をしています。
腎臓に入った血液はろ過されて、体に必要なものは尿細管から血液に再吸収、不必要なものは尿として体外に排泄されます。ろ過された直後の尿(原尿)には、血液中と同じ濃度の糖が含まれていますが、その99%以上が再吸収され、再び体を循環します。この糖の再吸収を担っているのがSGLT2です。
SGLT2阻害薬は、このSGLT2の働きを阻害することによって、過剰な糖を体外に排出するという、全く新しい作用で高血糖を改善します。こうして開発されたSGLT2阻害薬が、日本でも2014年4月から使用できることになりました。
なお、SGLT2阻害薬を使用する際には、尿量が増えること(トイレが近くなる)や脱水症状(特に利尿薬を服用中の方)に注意が必要です。また、尿糖の量が増えるので、尿路・性器感染症にも注意しましょう。他の糖尿病治療薬、特にSU薬やインスリンを使用中の患者さんが使用すると、低血糖を起こすおそれがあります。インスリン分泌が低下している患者さんや、極端な糖質制限を行っている場合には、ケトアシドーシスの発現に注意する必要があります。今後、有効性や安全性について、さらなる報告が待たれるところです。

 

低血糖や体重増加などの副作用が起こりにくく、かつ、良好な血糖コントロールが得られる治療薬の開発は現在も続いています。血糖値の変動と協調してインスリン分泌を促進するGPR40作動薬、肝臓での糖取り込みの促進とすい臓からのインスリン分泌を促進して高血糖を改善するグルコキナーゼ活性化薬、小腸からのGLP-1の分泌を促すGPR119受容体作動薬など、新薬の登場が待たれます。
今後さらに治療薬の選択肢が増えることで、患者さんの病態に合わせた個別の治療が可能になることが期待されます。

薬物療法は、病態の改善や合併症予防にとても重要な治療法です。食事療法と運動療法を基本に、薬の効果を上手に利用して、良好な血糖コントロールを目指しましょう。

 

馬場園 哲也(ばばその てつや)
東京女子医科大学糖尿病センター

 

次回のテーマは「進化する注射薬」です。

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
糖尿病センター センター長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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