糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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糖尿病患者さんは病気そのもの、もしくは治療によるストレスからうつ病を合併することが少なくありません。うつ病やうつ状態になっていないか、早期発見のために自分でチェックすることや、ならないように予防することが重要です。今回は、糖尿病に伴ううつ病について解説します。

糖尿病を持っている方はうつ病・うつ状態を合併することが多く、その頻度は一般人口の約2倍と言われています。糖尿病を自分で管理しなければならないことや、治療を続けなければならないこと、がんばっていたとしても合併症になるのかという不安が出てきたり、合併症を発症すると自由に行動できなくなったりと、すべてのことが心の負担となってきます ( 糖尿病に伴うストレスといいます)。一方で、うつ状態になると、過食になったり、嗜好が変わったり、毎日の行動が減少したり、内服薬・インスリンなどの注射を忘れやすくなった結果、HbA1c 値が悪化し、合併症を発症しやすくなることがあります。これらがまた気持ちをうつにしてしまいます。

 

うつが生じやすい状況には、糖尿病と診断された時や、合併症が出てきたと診断された時が挙げられます。また日常生活のストレス(職場、学校、家庭での対人関係の悩みや生活面での心理的悩み)が重なった時にも、うつは大丈夫かなと自己チェックしてみて下さい。

架空の患者さんを想定して下記に流れを再現してみます。

68 歳の鈴木さん(男性)は、以前から会社の健康診断で“糖尿病予備軍”と指摘されていました。定年退職後、口の渇きやだるさ(糖尿病症状と言います)を自覚していましたが、医療機関は受診しませんでした。趣味のテニスをしていたある日、突然左目が暗くなり見えなくなりました。病院を受診したところ、糖尿病網膜症による硝子体出血で手術が必要になると説明されました。またその日の採血で高血糖を指摘され、カロリーや嗜好品の制限など、これまでの食生活を大幅に見直す必要があるとも言われました。趣味のテニスも中止せざるを得なくなり、家に閉じこもりがちになってしまいました。妻や娘には自分が糖尿病であることを打ち明けられず、イライラしてささいなことで口論になってしまうようになりました。夜も寝つきが悪く、早朝に目が覚めてしまい、億劫な気持ちから食事療法に取り組むことができない状態でした。通院や治療を辛く感じていることを顔なじみになった看護師に打ち明けたところ、親身になって相談にのってもらい、少し気が楽になり、主治医にも治療の見通しを相談してみようという気持ちになりました。

 

33歳の中村さん(女性)は、15 歳の時に1 型糖尿病と診断されインスリン治療を継続しながら、積極的に部活動や勉強を続けてきました。卒業後は念願の旅行会社に就職し、結婚した後も順調に仕事を続けてきました。31 歳の時に出産し、育児と仕事の両立に追われるようになり、睡眠時間を削って残業をこなしていたのですが、ある日、仕事上のミスを上司に叱責され、帰宅後に涙が止まらなくなり、翌日から出勤できなくなりました。血糖値を測定することも、インスリン注射をすることも面倒になってしまいました。2週間後の糖尿病外来受診時に著しい高血糖を指摘され、今の気持ちを打ち明けたところ精神科を紹介され、うつ病と診断されました。1ヵ月間の休養とともに抗うつ薬を内服していると、次第に気持ちが落ち着いてきて、血糖値の変動も少なくなり、少しずつ前向きな気持ちが戻ってきました。

 

 糖尿病のみならず、うつに対しても、きちんとした食生活、十分な睡眠時間の確保、日光を浴びながら体を動かすことが疾病予防に役立つことがわかっています。

最近は、「認知行動療法」という認知に働きかけて気持ちを楽にする手法が注目されています。ストレスを受けるとつい悲観的に考えがちですが、そんな時でもプラス思考ができれば、辛い気分を和らげることができるようになります。ストレスの受け取り方や考え方を柔軟にすることで、辛い感覚を和らげ上手にストレスに対応できる心を作るわけです。このやり方はうつ病治療のための療法ですが、うつを予防する効果もあることがわかってきました。

糖尿病に伴うストレスに対して負担を感じている場合には、悲観的になり過ぎず、糖尿病の正しい知識と対処法を学んで、現実的でしなやかな考え方をしていくことが、辛い感情から解放される近道です。糖尿病に関する心配事や不安がある時、まずは身近な医療スタッフに自分の気持ちを伝えて相談して下さい。みなさんの話をよくお聞きすることで、抱えている問題や考え方を理解でき、支援の糸口が見つかることも少なくありません。そのような対処を行っても、辛い気持ちが続くような場合は、心療内科や精神科などの専門外来で相談し、うつ病の診断や薬物治療を検討することも必要です。

2012 年度の東京女子医科大学糖尿病センター実態調査(DIACET)でうつ状態を調査させて頂いたところ、65 歳以上の3 割の方にうつ症状があり、1 割前後の方では中等度以上のうつ症状があることがわかりました。うつの重症度が、糖尿病合併症(神経障害、網膜症、腎症)の程度と関連することが明らかになり、糖尿病患者さんのうつの早期発見、心身の負担軽減が重要であることが示唆されました。現在、同糖尿病センターでは、うつへの対策を講じています。辛い気持ちを抱え込まず、主治医をはじめとした医療スタッフに相談して頂ければと思います。

 

石澤香野(いしざわかや)
東京女子医科大学糖尿病センター

 

次回は「ノンカロリー、ゼロカロリー」を予定しています。

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
糖尿病センター センター長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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