糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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2型糖尿病患者さんの中には、高血圧を合併されている方が少なくありません。糖尿病と高血圧の両方を持つ患者さんの降圧目標と、日常生活の注意について、東京女子医科大学臨床検査科・糖尿病センター(兼任) 佐藤麻子先生にご解説頂きます。

厚生労働省の平成26年患者調査の概況によると、わが国の糖尿病患者さんは316万6千人、高血圧患者さんは1,010万8千人で、いずれも増加傾向にあると報告されています。そして、糖尿病患者さんの40~60%は、高血圧も合併していると言われています。

 

ではなぜ、糖尿病患者さんでは、高血圧を合併しやすいのでしょうか。糖尿病や高血圧は、食生活や運動習慣など生活習慣により引き起こされることが多い病気です。肥満やメタボリックシンドロームがあると、交感神経が緊張して、血圧を上げるホルモンが多く分泌されます。また、インスリンが効きにくくなるため、すい臓からはたくさんのインスリンが分泌されますが、インスリンは腎臓からのナトリウム排泄を減少させるため血圧が高くなります。このように、糖尿病と高血圧は相互に関連しています。その他、両方を引き起こすような遺伝的素因や内分泌疾患もあります。

 

高血圧は、心筋梗塞や脳卒中の重大な危険因子のひとつです。日本人では1970年代後半まで脳卒中が死亡原因の1位でした。この原因のひとつが食塩の摂取量が多いことでした。塩分の摂り過ぎは高血圧を引き起こします。最近では、減塩に対する意識が高くなり、脳卒中による死亡は減少してきています。しかし、欧米に比べると、日本人はまだまだ脳卒中が多いです。

 

糖尿病も高血圧症も動脈硬化を進める病気です。糖尿病があると、糖尿病がない人に比べて2~3倍、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高くなります。さらに糖尿病に高血圧が加わると、糖尿病や高血圧症のない人に比べて6~7倍になると言われています。日本人の2型糖尿病の方を対象にした研究で、脳卒中を引き起こす危険因子として、上記で高血圧と述べましたが、特に収縮期血圧の上昇が指摘されています。

そして、海外の報告ですが、糖尿病の患者さんは糖尿病でない方に比べて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管障害による死亡率が高くなります。さらに、血圧が高いほどその死亡率は高くなります(図1)。
また、高血圧は糖尿病合併症である糖尿病腎症を悪化させる重要な因子であることも知られています。

 

糖尿病のある方では、良好な血糖コントロールを目指すことはもちろんです。さらに、血圧のコントロールを良好に保つと、脳卒中や心筋梗塞とともに、糖尿病に関連する合併症や死亡のリスクが下がることがわかっています(図2)。

では、どのぐらいの血圧を目標にすればよいのでしょう。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、糖尿病患者さんの降圧目標を、130/80mmHg未満としています。ただし、高齢者では厳しい血圧コントロールは、ふらつきや起立性低血圧などの原因となる可能性があるため、やや高めに設定されています(表)。高齢者ではそれぞれの患者さんの病気の状態に合わせて慎重に血圧コントロールをしていきます。

 

● 血圧測定
まずご自分の血圧を知るために、家庭でも血圧を測るようにしましょう。ゆったりした気分で、座った姿勢で、腕帯などを巻き付けた腕や手首などが心臓の高さにくるようにして測ります。測定器はできれば指先などで測るより、上腕で測るタイプをお勧めします。測定した時間も記録し、診察時に主治医に報告しましょう。

● 減塩
減塩は、最も血圧を下げる効果があります。しょう油、漬物、佃煮、梅干し、味噌汁など、塩分の多い食品は注意が必要です。食品の包装にナトリウム量や食塩相当量が記載されているものもありますので、参考にして下さい。また、減塩方法として、塩の代わりに酢(調味料を含まないもの)やレモン汁を使うことをお勧めします。

● 体重管理
肥満やメタボリックシンドロームは血圧を上げる原因になります。また、たくさん食べるということは、それだけ塩分も摂っているということです。肥満を改善するための適切なカロリー制限は減塩にもつながります。

● 喫煙と飲酒
喫煙は血圧を上昇させるだけでなく、喫煙そのものが脳卒中や心筋梗塞の危険因子になります。がんの危険因子でもありますので禁煙しましょう。また、飲酒は糖尿病のコントロールにも影響しますので、適量にしましょう。

● 日常生活
ストレスをためず、適度な運動と十分な睡眠を取るように心がけましょう。

● 降圧薬
主治医から処方されている降圧薬は、血圧をコントロールするために必要です。必ず服用するようにしましょう。

佐藤 麻子(さとうあさこ)
東京女子医科大学 臨床検査科・糖尿病センター

糖尿病では、良好な血糖コントロールを心がけるとともに、積極的に血圧を下げると、合併症を予防することができます。生活習慣の改善を心がけ、血糖値だけでなく、血圧にも注意して治療していきましょう。

 

次回は「高齢者の糖尿病」を予定しています。

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
糖尿病センター センター長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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