糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
インスリン治療まで、関連する内容が満載!サイト内検索


食事療法は運動療法と共に、糖尿病治療の基本です。自分の生活スタイルに合った食事療法を続けていくためには、管理栄養士による「栄養指導」を活用することも大切です。
2型糖尿病の食事療法と栄養指導の活用について、東京女子医科大学病院栄養管理部 管理栄養士の柴崎千絵里さんにお話を伺いました。

 

2型糖尿病は、すい臓のβ細胞から分泌されるインスリンの働きが十分に発揮されない(インスリン抵抗性)、あるいは分泌されるインスリン量が徐々に不足するなどの理由により発症します。しかし、その多くは生活習慣、特に日常の活動量(身体活動量[表参照])と食事量のバランスの崩れが大きく関係しています。肥満の方を例にすると、減量するとインスリン感受性が改善することで、血糖値は下がってきます。また、食事の際に野菜や食物繊維の多い物から食べはじめることで、急激な血糖値の上昇を抑えることができます。このように、食事療法は、運動療法と共に2型糖尿病治療の基本となり、将来の合併症の発症予防をも目的として行われます。

日本糖尿病学会では、「糖尿病食事療法のための食品交換表」を作成し、改訂を重ねてきました。食事療法は、食品交換表を使って、必要なエネルギー摂取量(表参照)の中でいろいろな食材をバランスよく、いずれの栄養素も過不足なく摂るように指導されています。しかしながら、個人の食事に対する嗜好や習慣、生活スタイルなどは、だんだん多様化してきています。また、年齢、性別、職業などにより、消費するエネルギー量や基礎代謝量も異なります。食事療法は、食品の分量やエネルギー量といった「数字のシャワー」で説明するのではなく、患者さんそれぞれの生活や嗜好に合わせたオーダーメイドであるべき、と考えられるようになってきています。

 

食事療法が身に付き、うまく血糖をコントロールできている方もたくさんいらっしゃる反面、懸命に食事療法に取り組んでいるのに、思ったように効果が上がらない、何をどう改善すればいいのかよくわからない、と感じている方もいらっしゃるかと思います。こうした食事療法の問題点を管理栄養士と共に解決するのが、「栄養指導」です。
「栄養指導」というと、エネルギー量の計算や食生活の改善ばかりが中心だった時代もありました。しかし、現在は患者さん一人ひとりの生活に合わせて、無理のない方法を見出し、実現させることが栄養指導です。理想的な食事というのは、なかなか出来ることではありません。だからこそ、出来ない時にはどうすれば良いのか、その工夫や方法を提案していきたいのです。

 

※個人栄養食事指導(栄養指導)は医師の指示のもと管理栄養士が行います。1回の指導は概ね15分、保険診療3割負担であれば390円となります。

 

栄養指導では、まず、患者さんが、いつ、何を、どのような状況で食べているのかをおたずねします。また、食事や間食だけでなく、起床や就寝時間、就労時間や仕事の種類、家庭での過ごし方、お薬を処方されている場合は、その種類と量など、具体的に1日をどのように過ごしていらっしゃるのか、詳しくお話をお伺いします。それぞれの患者さんの日々の生活を一緒に検証しながら、食事や生活習慣の問題点を探ります。そして患者さんそれぞれの生活に合わせて、まずは簡単に取り組むことが出来そうなことから、提案していきます。

 

栄養指導を受ける時には、食事、間食、飲み物など、できるだけ正確に伝えていただけると、よりよい相談が可能になります。平日だけでなく、休日を含めた数日から1週間程度の記録があると理想的です。また、食べた物や量だけでなく、食べた時間も重要ですので、ぜひ記録してください。手書きのメモでも、デジタルカメラや携帯電話のカメラ機能などを活用してもかまいません。

 

栄養指導のタイミングは、食事療法が行き詰まったときだけとは限りません。学生では進級、進学などを機会に運動系の部活動をやめた時、社会人では転勤や転職で、通勤時間や職種が変わった時、また、退職した時などには生活習慣が大きく変化します。身体活動量が増減し、必要なエネルギー量も変わってきます。このような時は、食生活や生活習慣を見直すよいタイミングです。漫然と今までの食生活を続けるのではなく、ぜひ栄養指導を活用してください。また、ご高齢の方では、徐々に食が細くなる方も多いので、以前と食生活が変わったなと感じたら、改めて栄養指導を受けるのもよい心がけだと思います。

 

健康志向が進み、テレビや雑誌などにサプリメントや民間療法の情報が溢れる時代となりました。魅力的な広告に魅了されることもあるでしょう。しかし、良かれと思ったサプリメントや民間療法が有益ではなく、むしろ害を及ぼしてしまうこともあります。特に、腎症などの合併症がある方は注意が必要です。気になるサプリメントや民間療法があったら、始める前に主治医、管理栄養士、看護師などに相談してみましょう。ぜひ声をかけて下さい。

 

 

 

目標を決めて、食事療法や治療を継続することは大切です。毎日同じ時間に体重を測る、HbA1cを記録するなど、効果を数字で実感するのもよいかもしれません。また、HbA1cが7%を切る、体重を3kg減らすなど、ご自分で、具体的で身近な目標を決めてみましょう。そして達成感や満足感を味わうと、次のステップへと前進することができます。
食事療法は、自分に効果のある方法を続けてこそ意義があります。糖尿病であっても、美味しく、楽しく食事をしたいものです。ご自分の生活に合った食事療法で、適正な体重と良好な血糖コントロールが得られれば、さらに前向きな生活を送ることが出来ると思います。

 

柴崎 千絵里(しばさき ちえり)
東京女子医科大学病院栄養管理部 管理栄養士 (糖尿病療養指導士)

 

次回のテーマは「糖尿病と歯の健康」です。

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
アイウエオ順

管理番号:2515-1-0945-02