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糖尿病NEWS解説

重症低血糖発作の処置に朗報

No.9

グルカゴン点鼻粉末剤の登場

インスリンや経口血糖降下薬を使用していると避けられないのが低血糖です。手の震え、動悸や冷や汗などの低血糖症状に気付き、糖質を摂取するという対処ができれば良いのですが、意識が低下したり、昏睡や痙攣を起こし、他の人の助けが必要となることがあります。重症低血糖を起こした場合は、救急車で病院に搬送してもらい、糖を含む注射をしますが、家族や身近な人に血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンを投与してもらうこともできます。

従来、グルカゴンの投与は注射でしかできませんでしたが、2020年10月、グルカゴン点鼻粉末剤が発売となりました。低血糖で意識のなくなった患者さんの鼻に点鼻容器の先端を差し込み、注入ボタンを押して噴霧するという簡単な方法で投与可能です。日本人成人1型糖尿病および2型糖尿病を対象とした、本製剤と注射製剤との比較試験では、低血糖の治療成功割合はいずれも100%であり、本製剤が注射製剤と同様に有効であることが証明されました。

注射製剤の使用は、医療従事者以外にとってハードルが高いものでした。点鼻製剤は扱いやすく、患者さんの家族や周囲の人の安心に繋がるツールとなることが期待されます。

神山 智子
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、小林浩子、佐伯忠賜朗、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

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