高血糖を防ぐために気をつけたいことの第一は何といっても食事です。食べ過ぎがよくないのは言うまでもないことですが、何を、どのくらい、どのように食べるかによって、血糖値の上がり方は変わってきます。
体作りと生命維持に欠かせない3大栄養素「糖質」「たんぱく質」「脂質」のうち、食後の血糖値を上げやすいのは糖質です。まずは糖質過多にならないように注意を。
高血糖を防ぐために気をつけたいことの第一は何といっても食事です。食べ過ぎがよくないのは言うまでもないことですが、何を、どのくらい、どのように食べるかによって、血糖値の上がり方は変わってきます。
体作りと生命維持に欠かせない3大栄養素「糖質」「たんぱく質」「脂質」のうち、食後の血糖値を上げやすいのは糖質です。まずは糖質過多にならないように注意を。
糖質の選び方にもコツがあります。白米ご飯、白パン、うどんといった体に吸収されやすい「白い糖質」よりも、雑穀ご飯や玄米ご飯、全粒粉のパンやそばといった、食物繊維が多く体にゆっくりと吸収される「茶色の糖質」がおすすめです。
また、糖質を減らした分、脂質が増えてしまうというのは問題です。肉類や乳製品に多い飽和脂肪酸の多い食事は糖尿病の発症や進行に関係する悪玉因子を増やし、揚げものやクッキー類に多いトランス脂肪酸は、動脈硬化を進めて心臓病のリスクを高めてしまいます。一方、魚の油には、インスリンの働きをよくするホルモン「アディポネクチン」を増やす作用や、血液を固まりにくくする作用があります。肉よりも魚をしっかりとり、揚げものは控えめに。
※4 Diabetes Care . 2005 Mar;28(3):719-25
食べ方や食べ合わせのコツ
まず、ゆっくりよくかんで食べることで、食べ過ぎを防ぎましょう。よくかむと、インスリンの適切な分泌を促すホルモン「GLP-1」が増えるという報告があります。
食べる順番も重要です。いきなり糖質たっぷりの主食からではなく、野菜や海藻を先に食べる食べ方「ベジタブルファースト」がおすすめ。多く含まれる食物繊維の作用によって、後から食べる主食の糖質がゆっくりと吸収されます。これまで、カロリーばかりを気にして食べていませんでしたか?同じものを食べるにしても、食べる順番によって血糖値の動きは大きく変わるのです。
食材の組み合わせにも工夫を。ご飯には、納豆やチーズ、乳製品など高たんぱく食材のおかずや、消化吸収を遅らせる働きのある酢の物を組み合わせると、血糖値の急上昇が抑えられます。
1食抜いたり、夜遅く食べたりするのもやめましょう。欠食すると次の食事で血糖値が上がりやすくなります。また、食べてすぐ寝てしまうと血糖値はなかなか下がらず、使われなかったエネルギーが脂肪として蓄えられ、肥満の原因にもなるので要注意。
「適度な運動がいいのはわかっていても、なかなか続かなくて」という人は多いはず。でも「運動しなくては!」と身構える必要はありません。スポーツジムに通ったりランニングを始めたりと、あえて運動の時間をとらなくても大丈夫。
おすすめは食後に散歩などの軽い運動を行うこと。血液中の糖が筋肉へ運ばれ、エネルギーとなって使われるので血糖値が下がります。朝食後に掃除をする、昼食は少し遠めの店まで歩いていってとる、夕食後に犬の散歩をする――など、取り組みやすいことから始めましょう。
運動の効果は、直前の食事による高血糖を防ぐだけではありません。運動を行った日は行わなかった日に比べて、1日の血糖値上昇を総じて抑えることができます (※5) 。
また、軽い運動を習慣づけることで、健康な人も糖尿病予備群の人も糖尿病のある人も、血糖値が上がりにくい体になります。しかも、インスリンが効率よく利くようになって、分泌されるインスリンの量も少なくて済むようになるのです。
では、1日にどの程度歩けばいいのでしょうか。数々の研究の結果、「理想は1日1万歩」と考えられています。糖尿病対策を含む生活習慣病予防の観点から2000年に策定された「健康日本21」の改正版である「健康日本21
(2次) 」では、1日に20~64歳の男性で9,000歩、65歳以上の男性で7,000歩、20~64歳の女性で8,500歩、65歳以上の女性で6,000歩という目標が掲げられました。
策定時 (平成22年) のベースラインは、20~64歳の男性で7,841歩、65歳以上の男性で5,628歩、20~64歳の女性で6,883歩、65歳以上の女性で4,584歩です。令和元年の時点で、1日の平均歩数は、男性6,793歩、女性5,832歩に後退しています。男性は約2,200歩、女性は約2,500歩足りません。
1日1万歩が達成できればそれに越したことはないのですが、まずは現状より2,000歩~2,500歩プラスを目標にしませんか?時間にして約20分
(距離で1.2~1.5km) です。
通勤中の歩行時間が21分以上の人は、10分以下の人よりも糖尿病の発症リスクが3割低いという研究報告もあります (※6) 。少しがんばるだけでも違ってくる、ということです。
1日にどのくらい歩いているかを知るために、歩数計を身に着けるのもおすすめです。歩こうというモチベーションが高まります。
できれば「2UP 3DOWN」まで階段を使う、スクワットなどの筋肉に負荷を加える運動も行うとさらに効果的です。
ただし、何らかの持病のために運動が制限されている人は、まず医師に相談を。すでに糖尿病になってしまった人も、運動を禁止あるいは制限したほうがよいという場合があるので注意が必要です*。
*心血管疾患や神経障害のある方など、医師から運動を制限されている方は、医師の指示のもとで運動を行ってください。
※ 5 Diabetologia. 1999 Nov;42 (11):1282-92.
※ 6 Diabetes
Care. 2007 Sep;30(9):2296-8.
「糖尿病だと言われたけれど、何ら症状がない」という段階においても、それは「合併症がいつ起こってもおかしくない状況にある」と考えてください。「放っておいたら良くなった」などということはありませんし、治療を先延ばしにすればするほど、合併症のリスクが高まることがわかっています。
治療は、食事療法や運動療法、生活改善を基本とし、状況に応じて適切な薬剤を組み合わせて行います。きちんと治療を続けていけば、合併症を起こすことなく、快適な生活を続けることができます。
糖尿病の治療というと「薬は一生のみ続けなくてはならない。インスリンの注射を始めたら最後、一生注射を続けることになる」などと恐れている人も少なくないようですが、そうとも限りません。特に、食後高血糖だけが問題の早期の段階なら、薬の力を借りて膵臓を休ませることで、膵臓の機能が回復してくる可能性もあります。食事療法や運動療法の継続によって、薬をやめたり減らしたりすることができる見込みも十分にあります。
また、診断時点で重症の糖尿病になっている人の一部に、例えば糖分たっぷりの飲料の飲み過ぎで一時的に状態が悪くなった、いわゆる「ペットボトル症候群」が含まれます。こうした場合、急場しのぎのために、一時的にインスリン注射が用いられることも。改善が見られれば、インスリン注射の量を減らしたり、のみ薬に変更する、というケースもあります。
2016年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」であってもおおよそ4人に1人は治療を受けていない、あるいは治療を中止している、というのが現状。恐れず、あなどらず、早期のうちに医療機関に相談を!
1「ベジタブルファースト」でいこう
食事はまず野菜から。サラダや温野菜、野菜スティックがおすすめ。その後から食べる糖質の吸収がゆっくりに
2糖質の「重ね食い」に注意
うどん+かやくご飯、パスタ+パンのような、糖質が主体のメニュー2種を一度に食べるのは考えもの。野菜不足も心配
3食べ過ぎ、脂質のとり過ぎはNG
目指すは「腹八分目」。糖質を控えめにしても、肉や揚げものなどから脂質をとり過ぎないように気をつけて
4食事は抜かない。夕食は早めに
欠食すると、次の食事で食後高血糖を起こしやすくなる。遅めの夕食は、寝ている間の高血糖と肥満のもと
5よくかんで、ゆっくり食べよう
満腹感が高まり過食が抑えられるとともに、かむことで腸からインスリン分泌を促すホルモンが出てくる
6通勤時にひと駅分(20分程度)歩く
朝、ひと駅先まで歩くもよし、帰りにひと駅手前で降りて歩くもよし!
7昼休みは「歩いて店へ→ランチ→歩いて会社へ」
ちょっと遠い店まで歩いて行ってランチを。帰りは自ずと"食後の運動"になる
8「2up3down」までは階段で
上りは2階分、下りは3階分までは、エスカレーターやエレベーターより階段で
9出かけない日は、掃除や片づけをがんばる
どこへも出かけない日は、家の掃除や模様替え、物置の整理整頓などにいそしんで!
10 歩数計を持とう(スマートフォンの歩数計を見よう)
歩数計を身に着けるだけで「歩こう」というモチベーションが高まる
基礎疾患がある方、病気治療中の方など、食事や運動に関して何らかの制限が必要な方は医師の支援に必ず従ってください。
本冊子の提供する情報は、公平かつ正確を期していますが、利用の結果生じたトラブルに関する責任は負いかねますのでご了承ください。
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