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- 今は(注射)針がとても細くなっているので、痛みをほとんど感じません。
- 最初は人前で注射することに抵抗がありましたが、周囲の人が自然に接してくれたので気にならなくなりました。実際、人前で注射を打つ機会は意外と少ないです。
- 注射を始めた最初の1週間は、手が震えていたと思います。でも、今では手技も身に付き、上手に注射できるようになりました。
家康 糖尿病に対する「スティグマ」が問題になっているそうだが、一体それは何であるか?
医師 スティグマとは、特定の属性に対して刻まれる“負の烙印”を指し、誤った知識や情報が広まることで、対象となった方が精神的・物理的に困難な状況に追い込まれること1)を意味します。糖尿病に関する誤解や偏見により、糖尿病のある方はさまざまなスティグマにさらされていることが問題になっています。
家康 具体的には、どのようなことで皆は困っておるのだ?
医師 例えば、糖尿病が原因で就職や進学に悪影響が出たり、生命保険や住宅ローンに加入できない場合があります。また、インスリン治療に対する誤解も根強く、「インスリンを始めたら終わり」「一生続けなければならない」「あんな太い針を毎日刺すのは痛そう」といった誤った認識が広まっています。このような誤解のために、インスリン治療を始めるべきタイミングで躊躇してしまい、適切な治療の機会を逃すことで、糖尿病やその合併症が悪化することもあります。
1) 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド 2022-2023, p32, 文光堂, 2022
家康 スティグマの有無が、糖尿病の治療選択に大きく影響しておるのだな。しかし何とかできぬものか?
医師 一例として、スティグマにさらされている方は、そうでない方に比べてインスリン治療の開始に消極的であるというデータがあります。最適な治療の機会を逃さないためにも、スティグマの解消が求められます。そのためには、正しい知識を身に付けることが重要です。
家康 かの孔子もこう申しておる。「自分が知っていることを知っていると認め、自分の知らないことを知らないと認める、これこそが『知る』ということである」と。糖尿病治療に関しても、先入観や思い込みを捨て謙虚に学ぶ姿勢が肝要であるな。
医師 その通りです。インスリン治療は、生命維持に必要なインスリンを注射で補う重要な治療法です。糖尿病が悪化してから行うものというわけではなく、血糖値を適切に管理するために早期から開始されることもあります。また、インスリン治療で血糖値が改善すれば、飲み薬による治療に切り替えることも可能です。さらに、注射針は非常に細いため、痛みはほとんどなく、わずかにチクッとする程度です。
家康 なるほど、知ってみれば「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」といったところか。
Alidrisi H A et al. Cureus 2021;13(9):e18263より改変
医師 インスリン治療への誤解を解くには、実際に治療を受けている方の体験や感想を知ることが有効です。
家康 ほほう、その者たちからはどのような声が上がっておるのだ?
医師 例えば下記のようなものがあります。
医師 このように、最初は抵抗があっても、注射を続けることで前向きに治療に取り組めるようになった方も多くいます。こちらのページでは、糖尿病のある方々の体験談を紹介しているので、ぜひご覧ください。
家康 皆の声をこんなにも気軽に聞けるとは、天下分け目の関ヶ原から数えて四百と余年、まこと良き世になったものよ。
家康 あらためてそちに問おう。糖尿病の治療選択において大切なこととは何か?
医師 人それぞれ考え方や感じ方は異なりますし、特にネガティブな情報は耳に残りやすいものです。しかし、自分の人生は自分自身のものです。
家康 うむ、道理であるな。
医師 現在では、糖尿病治療薬の選択肢が広がり、糖尿病の状態だけでなく、ライフスタイルに合わせた治療が選べるようになっています。自身に合った選択ができるよう、まずは主治医に相談しましょう。主治医と十分に話し合い、自分に最適な治療法を見つけることが大切です。
家康 聞いたか皆の者! 今すぐ主治医に相談するがよいぞっ!
2) 厚生労働省 令和4年 国民健康・栄養調査 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001296359.pdf
International Diabetes Federation. IDF Diabetes Atlas, 10th edn. Brussels, Belgium:International Diabetes Federation, 2021. http://www.diabetesatlas.org
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