糖尿病は、自覚症状がなく進行する病気です。そのため、『糖尿病を見つけるための検査』や『糖尿病と診断された後も、定期的に状態を把握するための検査』はとても大切になります。ここでは、糖尿病に関する検査について一緒に勉強しましょう。
糖尿病は、自覚症状がなく進行する病気です。そのため、『糖尿病を見つけるための検査』や『糖尿病と診断された後も、定期的に状態を把握するための検査』はとても大切になります。ここでは、糖尿病に関する検査について一緒に勉強しましょう。
糖尿病の診断を行う上では、さまざまな検査があります。ここでは、代表的なものについて紹介していきます。
血液中のブドウ糖 (血糖) がどれくらいあるのかを調べます。食事によって、血糖値は上がったり下がったりするため、食
事前の「空腹時血糖値」や一定量のブドウ糖を水にとかしたものを飲み、その後血糖値がどう変化するかを調べる「75g経口ブドウ糖負荷試験」、そして食事の時間を考えないで測定する「随時血糖値」があります。
(1)空腹時血糖値の測定 (検査方法:採血)
10時間以上何も食べていない状態で測る血糖値を指します。
(2)75g経口ブドウ糖負荷試験 (75gOGTT) (検査方法:採血)
現在糖尿病の疑いが否定できない方に、強く実施が推奨されています。
具体的には、下記のいずれかに当てはまる方です。
・空腹時血糖値が110~125mg/dL
・時間関係なく測定した血糖値が140~199mg/dL
・HbA1cが6.0~6.4% (ただし、口渇、多飲、多尿、体重減少などの糖尿病の症状が存在する場合を除く)
さらに将来的に糖尿病になるリスクが高いと考えられる方でも、実施が推奨されています。具体的には、下記のいずれかに当てはまる方です。
・空腹時血糖値が100~109mg/dL
・HbA1cが5.6~5.9%
・濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が認められる
これ以外でも、高血圧・脂質異常症・肥満など動脈硬化のリスクを持つグループでは75g経口ブドウ糖負荷試験の実施が望ましいとされています。
注意事項
・検査が終わるまで、喫煙と運動は控えてください
・上部消化管造影X線検査や内視鏡検査の実施後には行わないでください
・小児と妊婦の場合は別の基準となります
〔日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド 2020-2021, P28, 文光堂, 2020より一部改変〕
検査1回目:血液検査、75g経口ブドウ糖負荷試験を行います。
①朝の空腹時血糖値 126mg/dL以上 ②75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200mg/dL以上 ③時間関係なく測定した血糖値 200mg/dL以上 ④HbA1c 6.5%以上 |
⑤朝の空腹時血糖値 110mg/dL未満 ⑥75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 140mg/dL未満 |
血糖値とHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型だった場合、再検査が必要です。再検査でも糖尿病型だった場合は、糖尿病と診断されます。ただし、初回の検査でも再検査でもHbA1cだけが糖尿病型だった場合は、「糖尿病の疑い」として、その後の経過観察を行ないます。
判定基準 | 判定 |
①~④のいずれかが確認された | 糖尿病型 →糖尿病の疑いありとして、別の日に再検査する (図2) |
①~③のいずれかと④が確認された | 糖尿病と診断 |
⑤および⑥が確認された | 正常型 |
上記いずれにも該当しない | 境界型 |
※正常型と判定されても、ブドウ糖負荷後1時間値が180mg/dL以上の場合は、境界型に準じた扱いが必要です。
(日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021, p24, 文光堂, 2020より一部改変)
〔日本糖尿病学会糖尿病診断基準に関する調査検討委員会:糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告
(国際標準化対応版).
糖尿病55:494, 2012より一部改変〕
〔日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, P26,
文光堂, 2020より一部改変〕
抗GAD抗体は、インスリンを出しているすい臓のβ細胞を自ら攻撃している抗体で、1型糖尿病の原因の1つの自己免疫反応をおこします。そのため、1型糖尿病の診断をする場合の重要な検査です。
自分のすい臓からどれくらいのインスリンが出ているかの指標となり、『インスリン依存状態』か『インスリン非依存状態』かを判別します。インスリン依存状態である場合、治療としてインスリン療法が必要です。
糖尿病の病態 | インスリン依存状態 | インスリン非依存状態 |
特徴 | インスリンが絶対的に欠乏し、生命維持のためにインスリン治療が不可欠 | インスリンの絶対的欠乏はないが、相対的に不足している状態。生命維持のためにインスリン治療が必要ではないが、血糖管理を目的としてインスリン治療が選択される場合がある。 |
臨床指標 | 血糖値:高い、不安定 ケトン体:著増することが多い |
血糖値:さまざまではあるが、比較的安定している ケトン体:増加するがわずかである |
治療 | 1.強化インスリン療法 2.食事療法 3.運動療法 (代謝が安定している場合) | 1.食事療法 2.運動療法 3.経口薬、GLP-1受容体作動薬またはインスリン療法 |
インスリン分泌能 | 空腹時血中Cペプチド0.6ng/mL未満が目安となる | 空腹時血中Cペプチド 1.0ng/mL以上 |
〔日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, P20, 文光堂, 2020〕
尿のなかにブドウ糖があるかどうか検査します。健康なひとは、ほとんど尿にブドウ糖が出ることはありません。尿中に含まれるブドウ糖の割合によって、試験紙の色が変わります。しかし、軽度の糖尿病では尿糖が出ないこともあります。
血糖値は、生活の様々なことに影響され常に上がったり下がったりと変動しています。よって、血糖測定器で出る血糖値の結果はその瞬間の値を示しています。
そのため、測定した時の状態によって「空腹時血糖値」「食後血糖値」「随時血糖値」など、名前が変わります。
HbA1cは血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」とブドウ糖が結合した物質で、過去1,2カ月の血糖管理の状態がわかります。長期間の血糖管理状態がわかることで、糖尿病治療の貴重な情報源になります。
血糖管理指標
合併症の予防や進展を抑制するためには、「優または良」を目指すことが推奨されております。
グリコアルブミン検査は、血液中のタンパク質の主要成分のアルブミンが、どのくらいの割合でブドウ糖と結合しているかを調べる検査です。過去約2週間の血糖管理をあらわす指標です。HbA1c検査ではわからない短期間の血糖値の変化と、短時間だけ現れる食後高血糖をとらえることができます。
基準値 GA 11~16%
1,5-AGは食品に含まれている物質ですが、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に排泄されます。血液中の1,5-AG
は、尿糖が出るほど減ってくるため、数値が低いほど血糖管理が悪いという検査です。過去数日間の血糖管理の指標となります。
基準値 1,5-AG 14μg/mL (マイクログラム・パー・ミリリットル) 以上
※高血糖が続くと数値は低くなります。
JP23CD00115