血糖値のことなんて、特別な症状でもない限り気にしていない人が多いはず。
でも本当はこれが大間違い。高めの血糖値が続くだけで、体の至る所が傷ついて、健康寿命を縮めてしまうことがわかってきました。40
歳を超えたら、すべての人が要注意。あなたは大丈夫ですか ?
正しく理解しましょう。高血糖と、老化や病気の深~いカンケイを
血液に含まれる糖 (ブドウ糖) は、生きるために欠かせないエネルギー源。食事からとり入れた糖を、体や頭のエネルギーとして消費するという"需要と供給"のバランスがとれていれば問題はないのですが――。
「食べ過ぎることがよくある」「菓子やジュースがやめられない」「これといった運動はしていない」「最近太り気味」――。思い当たる人は、余った糖が血液中に停滞し、必要以上に糖の濃度
(血糖値) が高まった状態、「高血糖」になっている可能性があります。
遺伝的な素因や心理的ストレスの影響も大きく、さらには、ただ年をとるだけでも、高血糖のリスクは高まります。
健康診断で「血糖値は正常」と言われた人も安心できません。空腹時の血糖値が高くなってくるよりも前に、食事の後にだけ血糖値が急上昇する「食後高血糖
(”血糖値スパイク”とも呼ばれています) 」を起こしている可能性があるからです。食後高血糖を繰り返すうちに空腹時の血糖値も上がり、ついには糖尿病を発症することもあります。
2016年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病とその予備群の合計は約2,000万人。成人の5人に1人が該当します。その数は増え続けていて、もはや国民病という域に達しています。
このほか、血液の流れが悪くなり、神経も傷み、免疫力も低下する……といったことが連鎖的に起こることで、歯周病や皮膚炎、感染症、勃起不全
(ED) といった病気にかかりやすくなります。さらには高血糖が認知症や骨の弱化、がんと関連していることも、数々の研究報告から明らかになってきました。
高血糖は、まさに「老化と万病のもと」。今すぐ手を打ちましょう。
※1 Lancet. 1999 Aug 21;354(9179):617-21. Diabetologia. 2004
Mar;47(3):385-94.
※2 J Clin Invest. 1993;91(6):2463–2469.
現代社会に生きることそのものが、高血糖のリスクと言えます。その理由は――。
理由その1
24時間営業のコンビニエンスストアや深夜まで営業する飲食店の存在
その気になれば、いつでもどこでも食事ができるということは、過食や不規則な食習慣を招きやすいということです。忙しいからと食事を抜いて次でドカ食いするのも血糖値急上昇のもと。
また、夜遅くに食べてすぐ寝れば、血液中の糖が使われないままになり、高血糖状態が続きます。
理由その2
血糖値を急上昇させる食品がいっぱい
血糖値を上げるのは食品に含まれる糖質です。なかでも体に吸収されやすい糖をたっぷりと含むのが、甘い菓子やジュース、精製した穀類、すなわち白米や白パンのような白い炭水化物です。白米をすりつぶした粉が原料のせんべいは、甘くなくても血糖値を急上昇させるので要注意。
逆に食物繊維が多い野菜や海藻類などは血糖値の急上昇を防いでくれます。外食がちであまり野菜がとれないうえ、めん類にご飯をつける、といった炭水化物"重ね食い"のランチが定番になっていたら、危険だという自覚を持ってください。
理由その3
交通網の発達とデスクワーク中心の生活
移動は車が中心、仕事の打ち合わせはメールや電話でほとんどすんでしまうから、パソコンの前に座りっぱなし――。これといった運動をしていなければ、糖がエネルギーとして使われず余ってしまいます。
理由その4
ストレス過多
ストレスによって分泌されるアドレナリンなどいくつかのホルモンには、血糖値を上げる作用があります。
こうした現代社会がかかえるさまざまな問題点に加え、加齢や遺伝といった不可避な要因、肥満や高血圧といった生活習慣に関連する要因が影響し合い、血糖値はどんどん上がりやすくなっていきます。
あなたに迫る高血糖のリスクを、下の表でチェックしてみましょう。
症状が出てからでは遅い
高血糖がジワジワと体にダメージを与え続けていても、多くの場合、すぐに症状が現れるわけではありません。それはなぜでしょうか――。
上がった血糖値は、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンによって速やかに下げられます。インスリンの分泌量が足りなくなったり、インスリンの効き目が悪くなる
(インスリン抵抗性が高まる) と糖尿病を発症しますが、膵臓はギリギリまで音をあげない「沈黙の臓器」。糖尿病を発症する10年以上も前から機能低下が始まっているにもかかわらず、がんばって働いてくれます。
糖尿病の典型的な症状とされる口渇、多飲、多尿、体重減少が見られるころには、もはや膵臓は正常時の半分程度しか働いていないと考えられます。しかも失われた機能を取り戻すのはなかなか難しい――。これが「糖尿病は治らない病気」と言われるゆえん。症状が出てからでは遅いのです。
とはいえ、早期に生活習慣をあらため、必要に応じて薬物療法を続けていけば、さまざまな合併症に悩まされることなく普通の生活を続けることが可能です。