糖尿病と肝疾患に密接な関係があります。糖尿病が肝臓に与える影響について、
専門医の先生が動画でわかりやすく解説しています。ぜひともご覧下さい。
糖尿病と肝臓
監修:佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター 特任教授 肝臓・糖尿病・内分泌内科 副診療科長 高橋 宏和先生
佐賀大学医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科 教授 安西 慶三先生
日本人に多いと言われるインスリン抵抗性のタイプの2型糖尿病のある方。肥満も加わるとNAFLD/NASHの進行を助長する可能性があります。
ここでは、糖尿病と肝臓の関係を一緒に学んでいきましょう。
肝臓の働きとインスリン
インスリンによる肝臓の血糖調整
健康な人では、食事をして、炭水化物中のブドウ糖が腸から吸収されると、膵臓 (すいぞう) から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって、肝臓内の糖の量を減らしたり、血液中の糖を肝臓に取り込んだりして、血液中の糖の量(血糖値)が適切になるように管理しています。
インスリン抵抗性と脂肪肝の関係
2型糖尿病の中に、膵臓からインスリンが分泌されているにもかかわらず、インスリンの効きが悪くなっているタイプの方がいます(インスリン抵抗性があるといいます)。この場合、肝臓内の糖の量が増え、血液中の糖を肝臓に取り込むことができなくなり、血液中の糖の量が管理できなくなってしまいます(血糖値が高くなります)。
また、過食や運動不足などで、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、食事で過剰に摂取した脂肪が肝臓にたまったり、食事で過剰に摂取した糖が中性脂肪に変換されて肝臓にたまってしまいます(これを“脂肪肝といいます)。2型糖尿病では、インスリン抵抗性があると、肝臓で中性脂肪をたくさん作るよう促されてしまいます。
NASHってどんな病気?
身近な疾患NAFLD
飲酒以外の原因で、軽度以上の肥満によって脂肪肝がみられる状態と、そこから進んだNASH (ナッシュ)(非アルコール性脂肪肝炎)までをNAFLD (ナッフルディー)(非アルコール性脂肪性肝疾患)といい、NAFLDは人口の9~37%にみられ1)、そのうちの13~31%がNASHになり1)、NASHから肝硬変になる人は9~20%といわれています1)。
アルコールが原因ではない脂肪肝 NAFLD
脂肪肝になると、脂肪がたまった肝臓の細胞が風船のように腫れて、炎症を起こします(肝炎)。この炎症が続くことによって(慢性肝炎(かんえん) ) 、肝臓の組織が損傷と修復を繰り返し、肝臓が硬くなっていきます(肝臓の線維化)。線維化が進行すると肝 (かん) 硬変になり、場合によっては肝臓がんになることがあります。肝臓に脂肪がたまる原因の一つに、過度な飲酒がありますが、飲酒が原因でなく、過食や運動不足といった生活習慣の乱れや肥満などが原因の脂肪肝をNAFLDといいます。NAFLDのうち肝臓に肝炎が発症し、線維化を起こし、やがて肝硬変や肝臓がんを発症する状態をNASHと呼びます。
NAFLD:Nonalcoholic Fatty Liver Disease(非アルコール性脂肪性肝疾患)
NASH:Nonalcoholic Steatohepatitis(非アルコール性脂肪肝炎)
日常生活で気をつけることは?
過食と運動不足の是正を
NAFLD/NASHでは、脂肪肝の原因となる過食や運動不足といった生活習慣の乱れや肥満が根底にあるため、食事療法や運動療法による生活習慣の改善が治療の基本となります。また、肥満を基本とした糖尿病や高血圧、脂質異常症などのメタボリックシンドロームと関係するため、生活習慣を改善しながら、お薬で糖尿病や高血圧、脂質異常症を是正することも治療の一つです。
なかには肝臓がんに進行する場合も
NAFLD/NASHでは、脂肪肝や脂肪肝による炎症が続く状態(慢性肝炎)を放っておくと、肝硬変に進行し、肝臓がんを発症することがあるため、早期発見・早期治療が大切です。しかし、脂肪肝や慢性肝炎の状態であっても症状がなかったり、だるさがあっても、気づかないことも少なくありません。
気になる方は超音波検査を受けましょう
NAFLD/NASHは、超音波検査などで脂肪肝が疑われ、飲酒が原因でなく、他の肝臓の病気でないことの確認が必要です。肝臓の組織をとって調べる肝生検によって診断することもあります。
健康診断やかかりつけの先生から、肥満を指摘されたり、糖尿病や高血圧、脂質異常症などがある方は、超音波検査などの画像検査を早めに受けるとよいでしょう。また、「NASHの疑い」と言われたら、肝臓専門医を受診し、詳しい検査を受けるとよいでしょう。
動画で学ぶ肝疾患-専門医からのメッセージ
糖尿病の症状
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