飽食の時代と呼ばれて久しい今の日本。今日明日の食べ物の確保もままならなかった戦後間もないころに比べ、この半世紀の間に糖尿病のある方は30倍以上になったとされます。ちなみにお隣の国、中国も同様で、有病者数は今や世界1位です。
実は我々アジア人の多くは、高血糖のダメージを受けやすい体質を持っているようなのです。白人に比べてインスリンの分泌力が低い、つまり、糖を処理する力が弱いと考えられます。
飽食の時代と呼ばれて久しい今の日本。今日明日の食べ物の確保もままならなかった戦後間もないころに比べ、この半世紀の間に糖尿病のある方は30倍以上になったとされます。ちなみにお隣の国、中国も同様で、有病者数は今や世界1位です。
実は我々アジア人の多くは、高血糖のダメージを受けやすい体質を持っているようなのです。白人に比べてインスリンの分泌力が低い、つまり、糖を処理する力が弱いと考えられます。
脂肪の「たまり方」にも違いがあります。体にたまる脂肪は、大きく分けて2種類あります。主に体のクッションとして働く「皮下脂肪」と、腸管の周りにくっついてたまり、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを高める悪玉因子を出す「内臓脂肪」です。日本人は相対的に内臓脂肪をためやすいこともわかっています (※3) 。
つまり、肥満とまで呼べない、内臓脂肪がたまってお腹がポッコリした程度の体形で糖尿病になってしまうのです。糖尿病のある方の体格指数 (BMI) を欧米と比較してみても一目瞭然。日本人の糖尿病のある方の平均BMIは正常域 (25未満) にあります。
小さなころから甘い菓子やジュース、脂肪分たっぷりの洋食を食べ続けている今の若い世代が30代、40代になるころには、もっと糖尿病が増えていると考えられます。
もちろん、肥満が大きなリスク要因であることに変わりはありません。高血糖が肥満を招き、肥満がインスリンの働きを悪くして高血糖状態を作る――という悪循環に陥るからです。インスリンはしっかり出ていて、たくさんの糖を処理できる
(=太れる)
けれども、そのうちインスリンの効きが悪くなっていく、そしてインスリンも出なくなってくる……という欧米人タイプの経過をたどる人も少なくありません。
つまり太っている人も、太っていない人も、注意が必要と言えます。
※3 Acta Diabetol. 2003 Oct;40 Suppl 1:S302-4.
いくら気をつけていても、体の機能は加齢とともに衰えていくもの。インスリンを出す膵臓の働きも、インスリンの効き目も、徐々に弱くなっていきます。さらには、体が必要とするエネルギー量自体が減っていくため、食べ過ぎのダメージは若いころ以上に深刻です。それなのに「ご飯は大盛り」「スイーツは別腹」「飲んだあとにシメのラーメン」などという生活を続けていませんか?
年をとるだけで高血糖のリスクは高まります。そのため、糖尿病かその予備群以上の人は40歳ごろから急に増え始め、50代で2~3割、70代ともなれば4割前後にまで達します。
女性の場合、閉経も大きなターニングポイントとなります。閉経前の女性なら、女性ホルモンの働きによって、余ったエネルギーは内臓脂肪ではなく皮下脂肪へ優先的に運ばれていきます。少々食べ過ぎたりしても、内臓脂肪はたまりにくいのです。
ところが、女性ホルモンの分泌量は40歳前後から減り始め、50歳前後の閉経期を迎えると激減します。すると余ったエネルギーは、内臓脂肪としてたまりやすくなってしまうのです。「閉経の影響」というと更年期の不調にばかり目が行きがちですが、高血糖のリスク要因でもあることを認識しておきましょう。
食後、インスリンの作用によって速やかに低下するはずの血糖値が高いままになっている状態を「食後高血糖」と呼びます。膵臓からインスリンが分泌されるタイミングが遅れたり、分泌量が十分ではなかったり、あるいはインスリンの効きが悪くなることが原因です。つまり食後高血糖は、膵臓の機能低下の最初のサインと言えます。この段階で「マッタ!」をかけましょう。
通常の健康診断では空腹時の血糖値を測定するため、この値から食後高血糖の存在を知ることはできません。手掛かりとなるのが、直近1~2カ月における血糖値の平均の指標となるHbA1c (ヘモグロビン エーワンシー) の値です。つまり、空腹時の血糖値が高くないにもかかわらずHbA1cが高いなら、平均を押し上げてしまう原因があります。その1つの可能性として疑われるのが食後高血糖です。健康診断の検査項目にHbA1cが入ってないようならば、かかりつけ医に相談して測ってもらいましょう。
HbA1cが5.6%以上で肥満があれば、「特定健康診査・特定保健指導」、いわゆる「メタボ健診」において支援の対象になります。つまり、HbA1cが少し高めの段階で手を打つ必要がある、というわけです。とはいえHbA1cでわかるのは、あくまでも血糖値の“平均”。これだけでは食後高血糖を見逃すこともあります。そこで、食後1時間の血糖値や尿糖を測ってみるのも手です。
こうした検査の結果から食後高血糖が疑われるようならば、医療機関に相談して糖負荷試験を受けましょう。食後の血糖変動の様子が詳しくわかります。
血糖値が正常域より高く、糖尿病の診断基準値より低い場合を「境界型」と呼びます。いわゆる「糖尿病予備群」というのは、境界型の人を指しています。近い将来糖尿病になる可能性が高いので、前糖尿病状態になっていると理解してもいいでしょう。「血糖値が高め」「糖尿病の気がある」などと言われたことがあれば、境界型の可能性が極めて高いのです。
「そんな風に言われたことはない」という人も安心できません。下のグラフを見てください。これまで一度も血糖値の異常を指摘されたことがないという40~55歳の男女に糖負荷試験を行ったところ、男性の3人に1人、女性の5~6人に1人が境界型あるいは糖尿病と診断されたのです。この結果から、健康診断で見逃されている“隠れ糖尿病”の存在が、もはや無視できないレベルに達していると考えられます。
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