初期のインスリン製剤は家畜の膵臓から抽出していました。1922年 (大正11年) 当時のインスリン製剤製造のためには、山のようなブタの膵臓から、たったボトル1本分のインスリンしか抽出できませんでした。1923年 (大正12年) にインスリンの製剤化が成功し、発売されます。日本でも輸入され使われ始めました。当時の価格は100単位8円。教員の初任給が50円程度であったことを考えると、極めて高価な薬でした※。しかし、初期のインスリン製剤は不純物が多く、注射部位が赤く腫れたり、皮膚がやけどのようになる副作用もありました。そこで不純物の少ないインスリン製剤が開発されました。皮肉なことに、純度が上がると今度は作用時間が短くなりました。そこで魚から抽出したたん白質(プロタミン)をインスリンに加えると、皮下からの吸収が遅れ、作用時間が長くなることが発見されました。様々な工夫がされましたが、根本的な問題として、動物のインスリンを使用している点には変わりがなく、そのため需要に生産が追いつかないだけでなく、アレルギー反応を起こすことなどもありました。そして、次第にヒトのインスリンを望む声が高まっていきました。
※日本では元々畜産が少なかったことと戦争のため、1968年 (昭和43年) までマグロなどの魚やクジラからインスリンを抽出し使用していました。