No.10
災害時は、まず安全な場所に避難し、命を守ることが必要です。そして、避難生活では糖尿病に関連した体調不良を予防することが大切です。避難生活の注意点について確認しておきましょう。
水分の摂取とトイレ
心筋梗塞、エコノミークラス症候群、尿路感染症などの予防のため、水やお茶で水分をしっかり摂りましょう。スポーツドリンクは糖分が多いので避けましょう。また、トイレをがまんせずに行くことが重要です。
食事の摂り方
支援物資や非常食は、炭水化物に偏る傾向があるので注意が必要です。たんぱく質や野菜が摂れる環境になったら、積極的に摂るようにしてください。
カロリー目安 |
おにぎり:約200kcal 菓子パン:約250~300kcal カップ麺:約400~500kcal |
薬・注射の調整
食事内容を目安に薬や注射の調節が必要になります。東日本大震災でも、体調不良などで食事が摂れない「シックデイ」に、薬や注射の調整が不十分であったと報告されています1)。飲み薬は種類により、中止か継続か異なります。1型糖尿病などインスリンが欠かせない方は、食べられなくてもインスリンは絶対に中止しないでください。持効型や中間型のインスリンは続ける必要があります。体調不良時やいざという時の調整方法を予め主治医と相談しておきましょう。
医療情報のチェック、医療スタッフとの連絡
災害時は情報が伝わりにくいとされています。災害後数日は災害医療が優先されますが、その後は糖尿病などの慢性疾患に対する体制が順次整います。医療情報はこまめにチェックしましょう。医療相談時は、糖尿病であること、処方内容、残りの薬について必ず伝えましょう。
感染予防
手の消毒とマスクに加えて、歯磨き(液体やシートでも可)で口腔内を清潔にすることが大切です。また、ケガややけど(暖房やカイロなど)などの傷は、放置せず手当をお願いしましょう。片付けやがれき撤去の時は、小さい傷から破傷風に感染する危険もあるので、ケガ予防のため体や手足を保護する服装で作業しましょう。
体を動かす
避難生活では、普段より運動量が減ります。心身の健康を維持するために、ストレッチ、かかとの上げ下げ、軽い体操、散歩(10分でもOK)を心がけましょう。
避難生活は限られた環境ですが、決して治療を中断することなく、医療スタッフのサポートを受けながら大変な時期を乗り切りましょう。
1)日本糖尿病学会:東日本大震災から見た災害時の糖尿病医療体制構築のための調査研究 アンケート調査結果報告書 2012
井出 理沙
東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科
監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也
編集協力
北野滋彦、小林浩子、佐伯忠賜朗、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順
JP22CD00064