No.12
減塩が勧められていますが、なぜ塩分を摂り過ぎると良くないのでしょうか。
糖尿病のある方と塩分についてご解説します。
適切な塩分量
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」1)によると1 日の食塩摂取目標量は男性では7.5g未満、女性では6.5g未満です。ただし、高血圧症のある方は1日6g未満が勧められています。糖尿病のある方はこれに準じると共に、顕性腎症( 尿アルブミン値300mg/gCr以上、あるいは尿タンパク値0.5g/gCr 以上、eGFR 30mL/ 分/1.73m2 以上)の方では高血圧の有無に関わらず1日6g未満が推奨されています。
塩分の摂り過ぎによる影響
塩分の摂り過ぎは、様々な病気を引き起こします。
●高血圧症
塩分を摂り過ぎると、血液中のナトリウム濃度を元に戻そうとして水分を取り込むため血液量が増え、血管への圧力が高まり高血圧を来します。2型糖尿病のある方では、塩分を摂ることで血圧が高くなる食塩感受性が高い方が多いので注意が必要です2)。
●脳血管障害や心血管疾患
高血圧が続くと、脳卒中や心臓病など動脈硬化を原因とした病気を発症するリスクが高くなります。
●腎臓病
塩分の摂り過ぎはナトリウムを排泄する腎臓に負担をかけます。また、高血圧症も腎機能が低下する原因となります。
糖尿病と塩
糖尿病と高血圧はいずれも動脈硬化を促進する病気のため、糖尿病のある方で高血圧があると、糖尿病合併症、脳卒中や心血管疾患などの発症リスクが高まります。
血圧を下げるためには減塩は欠かせません。また、血圧を管理することは糖尿病合併症の予防に繋がります。もう一度、減塩を意識して日々の食事を見直し、よりよい血糖と血圧の管理を目指しましょう。
1)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
2)日本糖尿病学会 編・著 糖尿病診療ガイドライン2019, 3 食事療法Q3-10, 南江堂
花井 豪
東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科
監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也
編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順
JP23DI00227