小島先生 吉村さん、今日も何だか楽しそうですね。何か良いことがあったんですか?
吉村さん 娘たちと福岡まで買い物と食事に出かけたり、ライブにも行ってきたんです。
小島先生 それは楽しそうですね。
吉村さん インスリンの注射をポンプに変えてから、低血糖の心配が少なくなり、行動範囲がぐんと広がりました。
小島先生 そうですね、あの頃は、冬場はHbA1cが高く、夏場は低いという変動をしていましたね。一番心配だったのは、早朝の低血糖でした。
吉村さん 何とか朝起きても、ぼーっとして。フライパンと菜箸を持ったまま動けなくて、お弁当が作れなかったりしました。ひどい低血糖の時には、主人と娘たち総がかりで朝から血糖値を測ってもらって、ブドウ糖を飲ませてもらったりもしました。
小島先生 ポンプをお勧めして、1年間様子を見てから始められましたね。
吉村さん 新しいものは好きなのですが、私が使える器械なのか少し心配でした。先生がご自分も付けているよと言って見せてくれた時はびっくりしました。何やら数字が出ていて、絶対使った方がいいですよって勧めて下さいましたね。
小島先生 他にも使っている方がたくさんいるので、お話しを聞いてもらうのが一番と思って、1型糖尿病のある方が集まる佐賀type1
DMサロンに参加してもらいました。
吉村さん 痛いのは注射で十分だから、これ以上、痛い目にあいたくないと思っていました。何かを体に埋め込まないといけないのかな?手術をするのかも?と勝手に想像していましたが、全然、そんな必要はありませんでした。皆さんのお話しを聞いて、「ああ、いいなぁ」って思ったんです。
小島先生 ご主人と看護師をしている娘さんもサロンに一緒に参加してくれて、納得していただけたようですね。
吉村さん ポンプにすべきか家族の中でも意見が分かれていたので、一緒に来てもらいました。ちょうど隣の方がポンプを付けていて、「便利なのでもう注射に戻りたくない」っておっしゃっていたのが印象的でした。外食の時に楽だし、外出の際の心配が減るというお話しも聞きました。
小島先生 ポンプへの切り替えには、ご自身がポンプの管理ができるか以外にも、診察費用や家族のご理解も大切です。
吉村さん 以前は、ひどい低血糖を繰り返していたので、血糖値が40mg/dL位に下がらないと自覚症状がほとんどありませんでした。気が付いた時には、重症なんてことも何度もあったのですが、今は症状が出る前に器械が低血糖を知らせてくれるから安心です。
小島先生 笑顔が増えたことは嬉しいですね。ライブでも買い物でも、低血糖の心配をせず、はつらつとして出かける姿を見るのは私も楽しいです。今まで同様、ご自分の好きなことを沢山してください。
吉村さん ポンプを使っても、やはり糖尿病とは向き合っていかないとなりません。これからも先生に色々と相談しながら、合併症のない、今の状態を長く長く続けて、毎日を楽しみたいと思います。
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低血糖で悩んだ日々にさようなら好きなことを沢山しよう
No.2
吉村 重子さん
1型糖尿病歴は24年、インスリンポンプを使用して5年。3人の娘さんとはショッピングやライブに一緒に出かける仲良しお母さん。ご主人を含め、家族みんなで出かけることも。温かな家族に囲まれ、活動範囲は益々拡大中です。
小島 基靖先生
済生会唐津病院(佐賀県唐津市)内科
日本内科学会認定医・総合内科専門医
1型で重症低血糖になりやすい方、頻回注射だけではコントロール困難な吉村さんのような方は、特に良いポンプの適応と判断。ご自身も1型糖尿病でインスリンポンプを使用中なので、その経験をふまえ色々相談にのって下さいます。
左から小島先生、吉村さん
監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也
編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順
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