田蒔先生 高校生だった大石さんが、大学の栄養学科を卒業して、この春から当院で働いてくれるようになったのは、とても嬉しいことです。
大石さん 先生に出会って、早10年(笑)。あの頃はカーボカウント法があまり普及しておらず、先生に手取り足取り教えてもらいました。病院での食事をカーボカウントするのには慣れたけど、家に帰ったらうまくカーボカウントができなくて、泣きながら先生に電話してアドバイスしてもらったこともありました。
田蒔先生 当時、大石さんは私の患者さんの中で最年少でした。だから、この方の人生を変える責任がある。良い人生を過ごしてもらいたいという、強い責任感を感じていました。
大石さん インスリンポンプが徳島ではあまり普及していない時期だったのに、積極的に導入して頂いて、私はとても恵まれているなあ、ありがたいなあと思っていました。思春期ということもあり、学校や外出先でインスリンを注射しなくてよいのがうれしかったです。
田蒔先生 糖尿病についても、治療についても、自分でも勉強することが大切です。その点、大石さんはとても頑張っていたし、病気を治さなくては!という強い意欲があったと思います。私は患者さんにはまずは治療の基本、食事の量やそれに見合うインスリンの量などをお伝えします。そしてわからないと思うことや、疑問に思うことに答えてきたつもりです。自分の頭で考え、対処する能力をつけてもらえるよう、支援し、それが実ったと思っていますよ(笑)。
大石さん 高校生の頃、先生がノートを1冊下さって、それに食事や運動、カーボカウントの記録をつけていました。
田蒔先生 血糖値が上がっている原因はこれ!とか、こういう時はこうしたほうがよい!
とか、ワンポイントアドバイスみたいなものを書き込みましたね。
大石さん 血糖値が不安定な時はよくノートを見返していました。今はもうあまり見返すことはありませんが、節目節目で手にとる大切なノートです。それから、1型糖尿病とわかった初期に、糖尿病の怖さをしっかり教えて下さいました。絶対合併症にはならないぞ!と強く思いました。
田蒔先生 大石さんの熱意に触れ、私自身も熱心に色々教えてたつもりです(笑)。今後はその熱意を他の糖尿病のある方にも分けてほしいですね。
大石さん 今までは糖尿病治療を支援される側でしたが、今は自分の経験も含めて、支援する側に立ちました。自分の知識のあいまいさをなくすようにしっかり勉強して、皆さんの治療に貢献できるよう頑張ります。糖尿病発症の大変な時から、今もなお、私の主治医としてお世話になっていますので、これからは恩返しができればと思っています。
田蒔先生 これからも一緒に頑張りましょう。ストレスをためず、うまく糖尿病と付き合う方法を伝授してほしいと思います。糖尿病の治療目的のひとつとして、糖尿病のない方と同じ生活ができることがあります。だからもうひとつ!ぜひ、大石さんも幸せになってほしいと願っています。
カーボカウント
炭水化物が食後の血糖値上昇に強く関与することに着目し、毎食ごとの炭水化物量を計算することで血糖値を調整しようという考え方。