伊東先生 ご主人が具合が悪くなった原因が、奥さんの病気だと聞いて、奥さんも一緒に通院したらと声をかけてから、もう12年ですね。
三ツ股幹男さん 妻が糖尿病でインスリン治療が必要と聞いて、パニックになっていました。あの頃、糖尿病には怖さばかり感じていました。糖尿病=死だと思い込んでいて、家内がいなくなったらどうしようと不安でいっぱいでした。
三ツ股加代子さん 自営業の手伝い、義理の母の介護、子供たちもまだ学生で、本当に忙しい時期でした。1型糖尿病と言われても、どうして良いものか。そういう気持ちや家庭の事情もお話しして、治療も色々考慮していただきました。入院せずにインスリン自己注射や血糖自己測定を習うことができたのは先生のおかげです。今思うと、若かったから乗り越えられたのかな、なんて思います(笑)。
伊東先生 男性の患者さんの場合、奥さんを連れてくる方は少なくないのですが、女性の患者さんにご主人が付き添っていらっしゃる方はそんなに多くありません。会話が沢山あるご夫婦で、お互い助け合い、理解し合おうという気持ちが伝わってきました。お話しを伺って、クリニックのスタッフ、看護師、臨床検査技師、栄養士、そして心療内科の院長もみんなで三ツ股さんご夫婦を応援してきました。三ツ股さんは真面目過ぎるのが玉にキズで、どこかで燃え尽きないか少し心配でした。
三ツ股加代子さん 血糖測定が辛くて、指先を何度も刺すとガサガサになったり、ぐずぐずしているとエラーが出たりして、益々うまく測定できないことがあり、泣きながらスタッフの方にお聞きしたこともあったんですよ(笑)。今はインスリン注射の種類も増え血糖自己測定の方法も増えたので、本当に楽になりました。
三ツ股幹男さん 私も事業を65歳で引退しました。時間に追われることはないし、自由な時間がいっぱいあると思いましたが、今度は何をしていいかわからない。でも妻は糖尿病があっても、自由にあちらこちらに出かける。すごいなと思いました。それで農業をはじめ、米の農閑期には野菜や果物を手掛けるようになると毎日忙しくなり、自分の気持ちも落ち着きました。私も糖尿病予備軍なので、農業という運動療法で血糖管理をしています。趣味と実益の健康管理です。
伊東先生 人生って色々ありますね。この12年の間に娘さんのご結婚や出産、頑張って介護していた義母さんの最期を見届けたこと、自由な時間を手に入れ今までやりたかったことを始めたり、沢山の変化が三ツ股さんの生活にあったと思います。
三ツ股加代子さん 家庭や仕事に縛られてできなかったことを、今は何でもやろうって思っています(笑)。ここの糖尿病友の会(豊府会)で、同世代の1型糖尿病の先輩に出会ったことも大きな心の支えです。1型だと若い人が多いですが、同世代の方に巡り会えたのは本当に心強く思います。先生をはじめここでの出会いすべて、これがなかったら今の私はないと感謝しています。
伊東先生 ライフステージごとに糖尿病治療の選択ができる良い時代になりました。三ツ股さんご夫妻の人生をこれからも応援していきますね。