莇先生 山本さんに初めてお会いしたのは2008年でしたね。
山本さん 友達が私の体を心配して、この診療所は評判が良いから行ってみたらと背中をおされました。最初は先生のお父さんにお会いして、「今すぐ入院しましょう、息子が主治医になりますからね。」と言われました。息子さんである先生はとても穏やかでほっとしました。不安で落ち着つかない気持ちだった私も、体調が改善しました。スタッフの皆さんにも親切にしていただいて、ここに決めよう、この先生についていこうと思いましたよ。インスリン治療は怖かったですけど、先生は「大丈夫や、少しずつ慣れていきましょう。」って。そのおかげで、今はインスリン治療が当たり前の生活になりました。
莇先生 今では血糖自己測定の記録もしっかり毎月1回提出してくれますね。
山本さん まだまだ、できないことがたくさんあります。体重を減らしましょうと言われても、なかなかできなくて(笑)。先生は私の性格をよくわかっているので、言われたことを守れなくても、落胆させないように「がんばっとるよ」と言ってくれます。だから私もだんだん責任を感じて(笑)。この次までにやろう、頑張ろうって。思うようにできないこともありますが、優しく見守ってくれているので、それがうれしいです。
莇先生 山本さんには10年程度、みのり会(城北診療所の糖尿病患者会、会員数約200名)の副会長を務めていただいているため、診察だけでなく、お会いする機会も多いですね。
山本さん 4年前のみのり会50周年記念集会では、スタッフのみなさんといっしょに、奇想天外な寸劇「キミの名は」に出演してさせていただきました(笑)。
莇先生 あの時は3ヵ月も前から練習を重ね、30分間にもおよぶ劇で熱演されました(笑)。それに糖尿病のある方同士が交流できる機会を増やして欲しいと発案されたので、「おしゃべり茶(サ)ロン」も始めましたね。
山本さん 糖尿病になって、色々わからないことも多くて、他の人の話を聞きたいなあと思いました。それで先生にお願いしたんです。
莇先生 山本さんは元々真面目だし、物事に積極的なので、そういう会を作ったらモチベーションも上がるのではないかと始めました。素晴らしい提案でした。新型コロナの流行で少しの間中止しましたが、地域の皆さんの期待もあり、対策を万全にして再開することができました。
山本さん 「おしゃべり茶ロン」では、30分間は先生が糖尿病のことをとても分かりやすくお話ししてくれます。おかげで正しい知識が色々得られます。その後の30分間は参加者同士のおしゃべり。人が集まって、自分の事、人の事、それぞれの思いを伝え合います。そうすると糖尿病はひとりじゃないと感じるんですね。みんなと話し合うことでそれが支えになり、安心感に繋がります。人と比較して、少し良いとか悪いとか(笑)。そうやって自分自身を励ましています。
莇先生 医療機関にとって患者会は大切なものです。今は本でもネットでもたくさん情報がありますけど、病気のある方にとって不安や心配になる情報もあります。同じ病気の方同士で話し合うことによってお互いに繋がりを持つことや、情報交換をする。そして、それをスタッフ一同で支援するのが大切なのではないかと思っています。
山本さん 先生方は糖尿病だけでなく他の心配事を相談しても、どうすれば良いか一緒に考え、解決への手助けをしてくれます。先生には何でも聞きたいです(笑)。いつもうれしいな、もったいないなと思い、同時にとても感謝しています。糖尿病があっても私はひとりじゃない。いろんな支えがあって、話ができる仲間がいると思うと安心するんですね。これからも今までと同じように見守ってくれたらうれしいです。
莇先生 いつまでも、長く元気に過ごせるよう、スタッフ共々応援しています。
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交流の場をたくさんつくることでもっともっと力になれる
No.8
山本 まち子さん
2型糖尿病をインスリン製剤で治療中。定年退職まで仕事を続けていたキャリアウーマン。体調やインスリン注射の打ち忘れを心配してくれる友達にも恵まれ、いつも周りは賑やか。明るい人柄で責任感も強く、患者会みのり会の頼もしい副会長。
莇 也寸志先生
城北診療所(石川県金沢市)所長
総合内科専門医 日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医
診療所は、高齢や経済的に困難をお持ちの患者さんが安心して医療や介護サービスを受けることができるような体制も整えている。ふんわりと温かな毛布のように患者さんを見守るまなざしと気遣い。身近な野の花の名が似合う患者さんたちから慕われる先生。
左から莇先生、山本さん
監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也
編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助
アイウエオ順
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