Go to the page content
3 min. read
3 min. read

ぺん・くらぶ

暑さ、寒さと注射薬

No.6

インスリン製剤やGLP-1 受容体作動薬など、糖尿病の注射薬は高温にさらされたり、凍ったりすると薬の成分が変化して効かなくなったり、使用できなくなってしまいます。今回は、注射薬の保存や管理方法について、暑さや寒さ、旅行や外出時など、特に温度管理に注意が必要な場合の対処法を紹介します。

基本的な保存や管理の方法

・使用前の薬の保存は2~8℃
糖尿病の注射薬の保管は、外箱があればそのまま冷蔵庫の凍結しない場所に箱を横にして置ける指定席を作りましょう。お勧めの場所は、ドアポケットです。その理由は、冷蔵庫内に置いてしまうと、他の物を入れる際に吹き出し口付近に押しやられて、凍結することがあるからです。また、夏場に冷蔵庫の温度設定を低めにし、そのまま冬を迎えると注射薬が凍結してしまうことがあります。冷蔵庫内の温度も季節によって調節が必要です。

・使用中は、室温(1~30℃)または涼しい場所で光に当たらないように保管
エアコンで室温を調節していても、窓際や直射日光の当たる場所は高温になることがあります。使用中の薬は涼しい部屋で、陽の当たらないところに保管しましょう。薬を忘れないように机や棚の上など目に付きやすい所に置く場合には、落下による破損を防ぐため、専用の袋などに入れておきましょう。一部の製剤は冷蔵庫での保管も可能ですが、凍らせないように注意してください。また、注射薬の使用開始後の使用期限は、製品により異なります。必ず処方された薬の使用期限を確認しておくようにしてください。

 

温度変化の可能性を示す注射液や注射器の状態

凍結したかもしれません。
・カートリッジ内に大きい気泡が見える
・カートリッジがひび割れている
・ゴム栓が膨らんでいる
・器具が故障している

高温になったかもしれません。
・薬液が変色している
・カートリッジの内側に付着物が見える
・液中に固まりや浮遊物が見える
・混ざらなくなる(混合製剤)
・液が半透明になっている(混合製剤)

夏場の保存と管理

注射薬を夏場に持ち歩く場合には、30℃以上にならない工夫と注意が必要です。冷蔵庫で冷やした保冷剤をタオルで包み、保冷バッグに入れて持ち歩くのが良いでしょう。冷凍庫で凍らせた保冷剤を使うと、注射薬が凍結する恐れがあるので避けましょう。保冷剤や保冷バッグがない、外出中に保冷剤の効果がなくなった時などは、冷たい飲み物のペットボトルや濡らしたタオルと厚地の袋などで代用できます。

冬場の保存と管理

気温が氷点下になるような季節や地域の場合には、短時間の持ち歩きでも、注射薬が凍結することがあります。注射薬は乾いたタオルに包む、保冷バッグに入れるなど、外気の温度に左右されないように注意して持ち歩きましょう。

特に温度管理に注意が必要な場合の対処

・飛行機に乗る場合、注射薬は必ず手荷物に入れましょう。スーツケースの中に入れ、貨物室に預けてしまうと、低温になり凍結する可能性があります。
・車で外出する場合は季節に関わらず、たとえ短時間でも車から離れる時には、車中に注射薬を放置しないようにしましょう。
・災害などで停電になった場合には、冷蔵庫の開閉をできるだけ控えて、庫内の温度が保てるようにしてください。また、避難所等でも直射日光の当たらない場所であれば、4週間程度は注射薬の効果を保つことが可能です。製剤により、室温での保存期間が異なりますので、予めご自分の製剤について確かめておくことも大切です。

人も薬も快適な温度は、ほぼ同じです。糖尿病の治療を助けてくれる注射薬は、ご自身の一部と考え、適切な管理をしてください。

髙木 聡
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也

編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助
アイウエオ順

JP23DI00227