ジャスティン モリス
Justin Morris
こんにちは。今月もブログをお読みいただきありがとうございます。
前回の連載第8回目では、1型糖尿病がもたらす影響は、患者さん本人だけではなく病気を一緒に対処していく家族全員にまで及ぶ、ということについて書きました。
1型糖尿病に対処するということは、常に変化する血糖値を評価、判断し、そして管理していくことが必要となります。
そして、1型糖尿病の管理に成功している人たちの多くは、血糖管理で培ったスキルを他の分野でも役立てています。
私の場合はアスリートが最も身近で分かりやすい例ですが、ほかの分野でも、血糖値を上手に管理して成功を収めている1型糖尿病のある方が大勢いらっしゃいます。
EU離脱政策の問題に取り組んでいる英国のテリーザ・メイ首相も誇り高き1型糖尿病管理の成功者です。彼女は英国下院の「本議会室 飲食禁止」という厳しい規則を破った最初の英国国会議員です。テリーザ・メイ首相は、「私はこれまで、糖尿病の管理がどれほど努力を必要とする病気か理解していませんでした」と、糖尿病が簡単にコントロールできる病気ではないことを認めています。
大きなプレッシャーがかかる重大な場面で大きな決断を下すことは、テリーザ・メイ首相のようなマネジメントの役割を持つ人にとっては重要な能力です。
1型糖尿病とともに生きる私たちは、知らず知らずのうちにこのような重大な決断を絶えず行っています。
どれくらい注射をし、どれくらい食べるのか?こうしたことは、1型糖尿病の私たちが日常的に下している重要な決断だと考えます。
こうした決断を行いながら日々を過ごすうちに、1型糖尿病のある方々は大きなプレッシャーがかかるときでも、最適な判断をごく自然に下せるようになります。私たちはそれだけの練習を日ごろから重ねているのです!
先日、私の故郷の州をめぐる5日間の難易度の高いレース、「ツアー・オブ・タスマニア」が開催されました。このレースで、GPM-スタルズというオーストラリアのアマチュアサイクリングチームと一緒に仕事をしました。
このチームにおける私の役割はスポーツ ディレクター(以後:DS注1)です。
DSとは7名の選手から構成されるチームのレース戦略を練るほか、レース中にはチームの車を運転し、レース中に選手たちをサポートする役割です。サイドラインからチームに大声で指示を飛ばすサッカーコーチのように、DSは他のチームカーや大勢のサイクリストが僅か数ミリの距離に迫る中、時速約55キロで走る車からチームメンバーへ指示を飛ばします。
DSとして下すべき決断は沢山あるうえに、レースの成功と選手の安全を確かなものにするには、それらの決断を極めて迅速に下すことが求められます。私は、このDSの仕事が好きで、競技選手を引退してからは、この仕事にとてもやりがいを感じています。
現在私は、GPM-スタルズのほか、チーム ノボ ノルディスクの育成チームのDSとしても仕事をしているのですが、レース前にはいつも、重圧のかかったレースの中で自分に正しい決断を下せるのだろうかと、自分のDSとしての力量に不安や疑念を抱いてしまいます。
なんといっても、7名の選手たちのレースにおける安全と成功は、本質的には私が下す決断にかかっているからです。
糖尿病や他の人生の問題がもたらす不安に直面した時も同じですが、このような不安にさいなまれた時は、これまで経験してきた、もっと難しい課題や決断を思い出すことで落ち着きを取り戻すようにしています。
最良の決断とは冷静なときにこそ下せるものであり、通常、冷静さの根底には自信があるのです。
これまで血糖値を管理する上で何百何千もの決断をしてきた私は、時速60キロで車を運転しながらレース戦略について冷静に適切な決断を下すことが出来ます。自信を持ち、冷静に下した決断ほど、周囲からも尊重されます。
めまぐるしく緊迫したレース中、私はDSとして冷静でいることを常に自分に言い聞かせています。私は選手としての経験上、DSが緊張しているのがわかると、選手たちにも緊張が伝染してしまうことを知っていたからです。このような緊張が選手に伝わると、選手たちのパフォーマンスにも影響を及ぼしてしまうのです。一方で、自信と冷静さを兼ね備えたDSは、アスリートのベストパフォーマンスを引き出すことが出来ます。
今回のレースでGPM-スタルズはチームとして4日間で4回も表彰台に上がり、総合第3位になる見込みです。これは予算が少ないアマチュアチームにとっては素晴らしい成果です。選手たちがチームとして団結して共通の目標を目指している姿を見ると本当に報われますし、それが原動力となって1週間を通してより良い結果が出せているのです。
私はこれまでにこのブログでたくさんのトピックスについて書いてきましたが、特に糖尿病とともに生きる人々へ向けたメッセージを書いてきました。
これまで共通してお伝えしてきたことは、
適切な手段があれば1型糖尿病でもなんだってできるということです。
物事に取り組む姿勢は成功を決定づける要因であり、サイクリングチームのDSのように、私の経験上、糖尿病がなんらかの挑戦をもたらしても、冷静に先を見据え、自信をもって対応すれば、必ずや最良の結果に結びつきます。
"出る杭は打たれる”文化の中では、内に秘めた自信は評価されにくいですが、糖尿病管理でも他のマネジメント業務でも、内に秘めた自信を培うことが最良の結果を達成するうえで大いに役立つと考えます。あなたにはそれができるはずです!
10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。
その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。
2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。
連絡先:
Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram:
@justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com
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