ジャスティン モリス
Justin Morris
こんにちは。皆様、2019年いかがお過ごしでしょうか。2018年は飛ぶように一年が過ぎました。素晴らしい経験もありましたし、ときにはもう二度と経験したくないような出来事にも直面した年でした。2018年の様々な経験から、どんなことをするにも忍耐が重要であることを学びました。
私が暮らすオーストラリアのタスマニア州では、毎年12月22日が夏至にあたり、1年で一番日が長くなります。
昨年、私と同じく元プロサイクリストである友人のスティーブが、夏至の日に向けてとんでもない計画を立てました。それは、タスマニア島の北西端にあるスタンリーから南端部のホバートまで遥か500kmの道のりを自転車で、しかもたった1日で走破しようというものでした。
この計画を聞いた途端、私のサイクリスト魂に火が付き、スティーブと四名の友人達と壮大な冒険へ参加することを即決しました。
私たちは、日の出から日没までの14時間、ほとんどぶっ通しで自転車をこいで完走するという目標を立てました。これはつまり、時速30kmを超えるハイペースで、ほとんど一日中自転車に乗り続ける必要がある上に、6,500mを超える山登りもあるという難易度の高い挑戦だということです。
日の光がかすかに見え始める午前3時30分、私たちはタスマニア島北部の漁村スタンレーを出発しました。スタート後の数時間は、太陽が昇り、風も穏やかで、意気揚々とペダルを踏み、順調に進みました。
旅とは多くの場合、始まりに最もモチベーションが高くなるものです。高いモチベーションと良好なコンディションが重なり、私たちは最初の3時間で110kmを超える距離を走ることができました。
しかし、その後、最初の険しい山登りで2人の脱落者が出てしまいました。彼らは体調不良や疲労に備えて用意していた車に乗り込みました。そして私たちは残る4人で残りの390kmの道のりを進むことになりました。
延々に続く山道が次第に険しさを増す中、150km進んだところで、自転車を漕ぐ足が悲鳴を上げ始め、1km進むごとにペダルが重く、苦痛になっていきました。そして、何よりこの時最も苦しかったことは、まだ残り300km以上も残っているという事実でした。
私がこの日までに自転車で走ったことのある1日の最長走行距離は310kmほどでしたが、その時にとても苦しく、体力の回復までに数週間も要した記憶が脳裏をかすめ、この先に立ちはだかるものが、途方もなく、乗り越えられないもののように感じられました。
残された私たち4人は、時間を追うごとに疲労が増し、普段ならなんでもないことでも、必要以上に大きく、大儀なものに感じられるようになりました。
私たちの後ろを走るディーゼルワゴン車の絶え間ないエンジン音にとてもイライラしてしまい、道路幅が広くなったところでドライバーに先に行くように叫んでしまいました。
また、身体も心も疲れていき、平たんな荒野であっても山のように感じたりしてしまうほどでした。
今回のような長距離ライドで重要なのは、この日に至るまでどのくらい走ってきたかという距離だと考え、この挑戦のリーダーであるスティーブにもそう話していました。
しかし、彼は、「より重要なのは、頭の中の距離だ」と私に言いました。そして、この日、私はずっとスティーブのこの言葉が頭から離れず、彼の言葉の意味を痛感したのでした。
スティーブは経験上、自転車だけでなく人生全体を見通す先見の明に優れ、山、風、暗闇、疲労といったものまでをも管理可能なものとしてとらえていました。
これは、彼のように経験豊富で頼りになり、バランス感覚に優れたリーダーにこそ成せる技です。
私たち4人がこの挑戦を完走するには、スティーブの存在は欠かせない要素のひとつでした。
私がこの挑戦を通して学び、実際にこの挑戦で有用であった試練に立ち向かうために必要な要素を皆さんにご紹介したいと思います。これはどんな種類の挑戦でも共通していえることだと思います。
①リーダーシップ
ひとつめの要素はリーダーシップです。先程も述べましたが、今回でいうスティーブの存在です。
彼は、私たちに目標の達成に向けた道筋を示し、この挑戦はやり遂げられるのだという自信を与えてくれました。
②仲間
ともに自転車をこぎ、励まし合える人がいるということは非常に重要であり、どんなに疲れ切ったときでもほんのひと言、あるいは微笑みを互いに交わすだけでエネルギーが少し湧いてくるものです。チームワークがドリームワークを可能にするのです。
③忍耐
私は110km地点でまさに苦痛の極致に達しましたが、その後それ以上に苦痛が増すことはありませんでした。ただその極限の苦痛や不快感に耐え続けなければなりませんでした。
非常に苦しい闘いをしているとき、さらなる試練が降りかかったとしても闘い続けられることがありますが、闘いの先にある目的さえあれば、耐え忍べるものなのです。
④目的
これこそが、苦しい闘いにおいて忍耐を生み出すものであると私は考えます。
私たちはこの挑戦を行うことで、タスマニアの人々を対象にメンタルヘルスサポートを行っている「Speak Up- Stay Chatty」というチャリティ団体の取り組みを広め、募金を呼びかけました。この団体では、心理的な負担の軽減やメンタルヘルスの問題に対する偏見、そしてタスマニアの自殺率を減らすために、学校や様々なコミュニティにおいて、他人と問題を共有することの重要性を伝えるワークショップを行っています。
トレーニングアプリの「ストラバ」やサイクルコンピューターが示すような、単なる走行距離ではなく、何かもっと重要なもののために今頑張っているのだと考えると、苦痛に耐えるだけの精神力が少し生まれました。
血糖管理に関しては、この日はこれまで経験した中で最良の血糖管理ができた日となりました。継続的な運動と、規則正しい食事により、一日を通して血糖値をほぼ一定に保つことができたのです。
CGM (持続血糖測定器) を走行中にも装着したことも血糖管理が上手にできた要素のひとつでした。この日CGMが示したグラフはかつて見たこともないほど完璧で、この日私が自己ベストの血糖管理ができたことを表していました。
もしかすると、一日500kmのツーリングは、血糖管理を完璧にするための裏技なのかもしれません (笑)
体の疲労回復は、この旅が課したもうひとつの難しい課題でした。この挑戦から1カ月経った今でも、毎朝目覚めると溜まった疲れを感じますが、日々回復に向かっています。
私はこの挑戦を通して、「耐えた先にこそ得るものがある」ということを学びました!
最後までお読みいただき有難うございました。
10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。
その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。
2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。
連絡先:
Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram:
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LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com
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