ジャスティン モリス
Justin Morris
糖尿病とともに生きる意欲となる「きっかけ」には、日常生活のあらゆる場所で出会うことができますが、医療従事者が患者さんに与える影響や果たす役割は大変重要なものです。
そして、医療従事者だけでなく、家族・友人も含めた「糖尿病チーム」を作ることが、長期的に意欲に火をともし続けるために大切だとジャスティンさんは言います。
そして、この糖尿病チームを作るために、糖尿病とともに生きる人々にとって必要な力とは?
ジャスティンさんのブログ第15回を是非お読みください。
前回のブログでは、九州出身の若きサイクリスト田仲駿太選手との素晴らしい旅、そして人生において夢をかなえたロールモデルとなる人との出会いについて紹介することができました。
今年の8月、私は再び美しい日本を訪れ、糖尿病とともに生きる人生について講演するため、関東から九州まで旅をしました。講演では1型糖尿病のある駿太選手や私自身の半生について紹介し、糖尿病とともに生きる人々に意欲を与え、「きっかけ」となることができる、人生のロールモデルについてお話ししました。私は少年の頃から今に至るまでこういった「きっかけ」との出会いに恵まれています。
日本で行った講演の多くは医療従事者を対象としたもので、講演には多くの糖尿病専門医や栄養士、看護師、医師が出席してくださいました。彼らは患者さんを勇気づけ、意欲に火をつける重要な役割を果たしています。第4回のブログでは、私の担当医の診療所に飾ってあった写真が「きっかけ」となり、糖尿病とともに生きる意欲が湧いたときのことについて紹介しました。
勇気と力を与えてくれる医療従事者に出会ったことが、生きるモチベーションとなったのです。
このことは、医療チームに伝えるべき大切なメッセージであると考えています。
なぜなら、糖尿病とともに生きる人々にとって、医療チームこそが最初に助けを求める場所となるからです。したがって、患者さんが糖尿病のことをどのように捉えて、自分の人生においてどのような存在になるのかという、糖尿病に対する考え方を医療従事者が形作っていきます。
日本は糖尿病治療を受ける方にとって非常に恵まれた国であると思います。私が日本で出会った医療従事者の方は皆、強い熱意を持ち、最善の結果が得られるように患者さんの治療に取り組まれていました。時として医療の現場では、理論に基づいた医療から、患者さんを中心としたアプローチへ移行する必要が生じます。
そして、患者さんのことを深く理解するためには時間と努力が欠かせません。しかし、患者さんを理解することによって、どれほど素晴らしい効果がもたらされるかは、私自身の経験からも、糖尿病とともに生きる多くの人々をみても明らかです。
「きっかけ」に診療所の外で出会う人も多いと思いますが、医療の場もまた、患者さんの意欲に火をつける「きっかけ」となります。だからこそ、チャレンジ(課題)に対処するうえで医療チームが果たす役割は大変重要となります。そして医療チームは、私たちの「糖尿病チーム」に欠かせないメンバーとなります。
さらに、この「糖尿病チーム」は、長期に渡って意欲に火を灯し続けるために、同じゴールを目指さなければなりません。フットボールの試合と同じように、チーム全体がひとつのゴールを目指し、一致団結して成功を勝ち取らなければならないのです。日本のような先進国で糖尿病とともに生きるのであれば、ぜひこの医療チームを最大限に活用してください。日本で出会った素晴らしい医療チームのメンバーは、「糖尿病チーム」の一員として、私たちの意欲に火を灯しつづけ、新たな一歩を踏み出すための力となってくれるでしょう。
私たちの人生は、糖尿病を抱えずに生きる人々に比べて時に複雑で課題が多く出てきます。だからこそ恐れることなく、また恥じることなく、周りに支援を求めるべきなのです。「糖尿病チーム」は私たちとともに人生を歩み、サポートしてくれます。
そして「糖尿病チーム」の輪は、主治医や医療従事者だけではなく、家族や友人といった自分にとって大切な人々にも広げていけるのです。勇気を与えてくれる人が周囲にいれば、人生で出会うさまざまなチャンスを掴むことができます。そしてチームメイトと心を通わせ、人生をともに過ごせば、必ず素晴らしい何かが生まれます。チームメイトこそが、あなたの意欲に火を灯す栄養となるのです!
糖尿病とともに生きる私たちがチームを結成し、その輪を広げていくためには、ある程度の「受容力」が必要となります。例えば、自分が置かれている状況に抗って受け入れることを拒んでしまうと、その状況のなかで前進することが非常に難しくなるケースがあります。それは糖尿病においてもまったく同じです。私たちがチームを結成するためには、まず糖尿病が自分の人生の一部であることを認めなければならないのです。
残念ながら、この煩わしく、とてつもなく不便な糖尿病というものは、今すぐにどこかへいってしまうものではありません。しかしながら、その状態が自分の日常生活の一部となったと認めることが、糖尿病とともに最高の人生を生きることを可能にする最初の一歩となるのです。障害を抱えながらも幸せと成功を手にした人々のストーリーを見ても、この「受容力」を身に着けることが長い人生において最初の一歩であることがわかります。
米国の有名な作家であり、映画評論家として世界に名高い「ピューリッツァー賞」を受賞したロジャー イーバート氏は、著名な歴史家でもありました。彼は長年にわたり甲状腺癌とともに人生を送り、数多くの課題を克服しながら働き続け、作家としての成功を手にしました。
「糖尿病チーム」のメンバーにとって、特に知ってもらいたい彼の格言があります。
それは「人生は、解決することはできず、ただ受け入れるしかない数多くのチャレンジ (課題) でできている」というものです。このイーバート氏の格言のなかで鍵となるのは「チャレンジ (課題) 」という言葉だと私は思います。イーバート氏は「障害 (バリア) 」ではなく、「チャレンジ (課題) 」といったのです。人生とは「チャレンジ (課題) 」が集まってできたものです。そして私にとって糖尿病とは、その数ある「チャレンジ (課題) 」の一つに過ぎないのです。
あらゆる人が、私が紹介しているような「きっかけ」に自分自身がなったり、「きっかけ」と出会うチャンスを得てほしいと願っています。「きっかけ」と出会うためには、まず自分で探さなければなりませんが、それは必ずどこかにあるのです! 私が本当に強調したいことは、「きっかけ」と出会い、長い人生において意欲に火を灯しつづけるためには、チームが果たす役割がとても重要となるのだということです。そして皆さん自身の「受容力」を高めるほど、チームがさらに大きくなり、より多くのサポートを得ることができるようになると信じています。皆さんに素晴らしい秋・冬が訪れますように。今回もブログをお読みいただき、ありがとうございました。
10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。
その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。
2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。
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