1958年東京生まれ。1995年に糖尿病と診断される。2007年からは糖尿病性腎症による末期腎不全のため、透析治療を開始。現在でもお笑いタレント、ミュージシャンとして精力的に活動。著書『糖尿病だよ、おっ母さん!』では糖尿病の発症から透析に至るまでの経緯をエッセイ形式で綴っている。
※2011年取材当時の情報です。
たけし軍団の一員として、お笑いタレントのみならずミュージシャン、舞台俳優としても活躍している義太夫さん。1995年に糖尿病と診断され、現在では糖尿病性腎症による腎不全のため、週15時間の透析治療を受けています。そのような状況でも前向きに病気と向き合っている義太夫さんから、メッセージをいただきました。
(インタビューは2011年8月に行いました。)
初めて糖尿病と診断されたのは1995年です。僕が36歳のときに父親が糖尿病をきっかけに亡くなり、その1年後に今度は自分が糖尿病だと言われたのです。そのときには全く自覚症状がありませんでした。「痛い」とか「つらい」が全くないんです。
季節は夏でした。無性にのどが渇いて、のどが渇くから飲み物を飲む、そうするとトイレが近くなる。自分ではただの夏バテかと思っていました。今思えば、他にも体からいろいろなサインが出ていたんですね。目がかすみ、家で普通にテレビを見ていても映画などの字幕がはっきりと見えないことがありました。
次は気が付くとやせていました。そのとき、事務所が公称していた僕の体重は110kgでした。それが体重計に乗ったら95kgしかないんです。普通に食事をして、何の運動もしていないのに15kgも減っていました。これがまさか糖尿病の症状だとは思っていませんでした。
しかし、そうこうするうちに家で倒れてしまいました。病院に運ばれたのが土曜日の夕方だったので検査ができませんでした。僕が「夏バテだと思う」と言ったら、そのとき担当してくださった先生は栄養剤の点滴を2本打ってくれました。その2日後の月曜日に血液検査に来てくださいって言われていたので、月曜日の朝に再び病院に行きました。血液検査をして「夏バテだしな、なんか薬もらって帰るんだろうなあ」と思っていたら、看護師さんが飛んできて「すぐ来てください」と。先生のところに連れて行かれて「すぐ入院してください」と。「え?夏バテで入院ってどういうこと?」と聞いたら「夏バテではないです、糖尿病ですよ」って言われて、そのときの血糖値が630 (mg/dL) でした。先生には「こうやって話しているのが信じられない、普通だったら高血糖で昏睡状態ですよ」と言われました。
1週間ほど入院して、食事療法とインスリンの打ち方を教わりました。自分の父親が糖尿病ではありましたが、このときにはまだ糖尿病という病気について何も知りませんでした。どういう症状で、どんなときに自分がどうなるのか、初めて糖尿病のメカニズムを理解しました。
糖尿病のある方が最も取り組みやすい治療法は食事療法だと思っています。毎日3回の食事をきっかけにすれば、血糖やその後の病気の進み具合を自分で管理できると思っています。食事療法に取り組むにあたっては、やっぱり自炊がいいと思います。なるべく自分で作って、栄養価とか単位数とかを自分で計算しましょう。自分でやってみると、今後の生活がどんどん変わると思うんですよ。
でも、あんまり厳しくしすぎると、ある日ストレスが爆発してしまうんですよね。他の患者さんでもいきなりぐわっと一気にたい焼きを食べちゃう人がいたりして。だから僕は週に1回とか、1カ月に2回とか「ちょっと食べてもいい、その代わりその前後は控えよう」と、トータルで調整するようにしています。「これぐらいなら食べてもいいだろう」というのはいけないと思いますが、いちばんいけないのは無理をしすぎることだと思います。実践できる範囲で、なるべく調整するようにしています。
運動療法についてですが、僕は運動が嫌いなんです。最初にやってみたのは車に乗ることをやめて、自転車に乗ったり、歩くことでした。食事と同じですが、あまり無理をしすぎると続かないので、なるべく生活の中で続けられるように習慣づけることを心がけています。「ジムに行くぞ!」って意気込むよりも、一駅前で電車を降りて歩くとか、車をやめて自転車にするとか、自分の生活の中に運動を取り込むことで、無理なく続けられると思います。
食事療法も運動療法も、ちゃんと自分で生活の中に取り込めるように組み立てれば長続きしますよ。食事と運動はちゃんとやらないと僕みたいな状態が待っているので、こうなる前の患者さんには「今なら間に合います!」って言いたいです。
糖尿病のある方でいけないパターンは、自己判断による通院中止だと思っています。実は僕もそうでした。糖尿病には自覚症状があまりないので、薬を飲んでもその薬が効いているかどうか自分ではわからないんです。そのうち注射を打ちたくないとか、薬を飲みたくないとか、病院に行きたくないという理由で、だんだん病院の敷居が高くなっていって、「次に病院に行ったときに先生に怒られる」と思ってしまうんです。
今、「僕は糖尿病予備群なんだよね」っていう人は糖尿病を発症しないように、糖尿病だと診断された人は合併症を予防するために、ベストを尽くしてください。いちばん気を付けなければいけないのは食生活だと思います。糖尿病は自分でできる生活習慣の改善で、病気の進行を遅らせることができると思っています。
糖尿病の予備群や糖尿病のある方には、「ああいうふうになっちゃうよ、義太夫のようになっちゃうよ」って思っていただいて、僕みたいにならないように気を付けていただきたいです。僕もこれから頑張って、僕みたいな患者さんが増えないような活動をしていきたいと思います。
1958年東京生まれ。1995年に糖尿病と診断される。2007年からは糖尿病性腎症による末期腎不全のため、透析治療を開始。現在でもお笑いタレント、ミュージシャンとして精力的に活動。著書『糖尿病だよ、おっ母さん!』では糖尿病の発症から透析に至るまでの経緯をエッセイ形式で綴っている。
※2011年取材当時の情報です。
※この記事は2011年に行った取材を基に作成しています。
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